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受領年2016
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投資金額¥278,158,892病気Malaria対象Vaccine開発段階Phase1 Clinical Developmentパートナー大阪大学微生物病研究所 , 大阪大学医学部附属病院未来医療センター , ノーベルファーマ株式会社 , Institut de Recherche en Sciences de la Santé (IRSS) , 欧州ワクチンイニシアチブ(EVI)過去の案件
イントロダクション/背景
イントロダクション
BK-SE36は、流行地域における幼児を対象とした血液ステージマラリアワクチン候補であり、血中のマラリア原虫数を制御することによって、主に罹患率と死亡率の低下を目指すものである。アフリカにおける先の第Ib相臨床試験では、(i)水酸化アルミニウムゲル(AHG)をアジュバントとして加えたBK-SE36は安全だけでなく、臨床マラリア症状を発する危険性を低下させ、ワクチン応答者ではマラリア感染を防御することを実証した。さらにワクチン応答率を高め免疫力を増強するため、K3 CpGアジュバントを加えた新しい製剤、BK-SE36 / CPG、は国内の第1相臨床試験で安全性と免疫増強効果が認められた。本プロジェクトは流行地域においてBK-SE36 / CPGの安全性と免疫増強能力を評価することを目的とする。
プロジェクトの目的
本プロジェクトは、自然免疫レセプターであるTLR9のリガンドK3 CpG-ODNをアジュバントとして加えたBK-SE36/CpGマラリアワクチン候補の安全性と免疫増強効果を、熱帯熱マラリア流行地域においてマラリア感染を経験してきた健康アフリカの成人および小児において評価することを目的とする。単一用量(100μg SE36 protein)を筋肉内に3回接種し、安全性評価と抗SE36 IgGのレベルを測定する。
プロジェクト・デザイン
試験は無作為化二重盲検、単一用量、成人から1歳児まで年齢を順次下げて行く第Ib相臨床試験である。臨床試験場所は、現在までマラリアの発生率が最も高い西アフリカのブルキナファソである。合計135名の健康な被験者(成人> 21歳、5-10歳、12〜24ヶ月齢)は、BK-SE36/CpGまたは対照ワクチンのいずれかが接種され、マラリア感染経験者においてその安全性が評価される。日本におけるマラリア未感染者における第1相臨床試験では、その安全性を確認するとともにBK-SE36よりも高い免疫増強効果が示された。ブルキナファソにおける本プロジェクトでは、2回の接種と追加免疫接種によりその安全性および免疫原性を評価する。臨床試験では11回の定期訪問とともに、体調不良を訴えたボランティアはいつでも診療を受けることができる。施設内倫理委員会、科学諮問委員会、独立した地域の安全監視の体制を整え、臨床試験の実施と監督が行われる。
本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?
世界保健機関(WHO)によると、最近の約20年の努力によってマラリア流行は大幅に改善されたが、2015年にはまだ推定2.14億例のマラリア感染と438.000人の死亡を引き起こす甚大な被害をもたらしている。殺虫剤耐性のハマダラカの出現やマラリア原虫の薬剤耐性株が出現している中、マラリア対策に取り組むためにはマラリアワクチンが理想的である。従って、有望なワクチン候補のさらなる臨床開発のサポートを含め、効果的なマラリアワクチンの研究開発のための長期サポートはグローバルなマラリア問題への優先課題である。WHOが2030年にライセンス供与を目指すマラリアワクチンは臨床マラリアに対して少なくとも75%の防御効力を持つことが求められており、グローバルヘルスへの資金提供者グループにとって優先順位の高い課題の一つである。
本プロジェクトが革新的である点は何ですか?
これまでのところ承認されたマラリアワクチンは存在しない。グラクソスミスクラインが開発している肝細胞期を標的としたRTS,Sマラリアワクチンは多数回の接種が必要な一方で、低い有効性と効果期間の短さから、世界的なマラリア撲滅のための最後の手段になることはないと思われる。赤血球ステージはマラリア原虫がヒトの血液中で増殖し、ヒトにマラリア症状を生じさせるステージであり、SE36(BK-SE36に含まれる抗原)のような赤血球ステージ抗原は、マラリア原虫のライフサイクルの異なる段階を標的としたいくつかの抗原を組み合わせた将来の第二世代のマラリアワクチンに含まれる主要な成分の一つになる。 BK-SE36は、すでに有望なマラリアワクチン候補であることが実証されているが、さらに、免疫原性を高めるために自然免疫アジュバントを加えた製剤が本プロジェクトにおける革新技術である。
各パートナーの役割と責任
本プロジェクトの全体的な調整と管理は欧州ワクチンイニシアチブ(EVI)が担当する。大阪大学微生物病研究所はGMPグレードの治験薬BK-SE36 /CpGの供給、および、日本での分析業務を担当する。Institut de Recherche en Sciences de la Santé (IRSS)は第Ib相臨床試験の実施を担当する。大阪大学医学部附属病院未来医療センターは医療顧問として参画し、(株)ノーベルファーマはスポンサーとして、ICH-GCPと地域の規制に従った臨床試験の実施を確保するための監督を担当する。
他(参考文献、引用文献など)
Horii T, et al. Evidences of protection against blood-stage infection of Plasmodium falciparum by the novel protein vaccine SE36. Parasitol Int. 2010: 59(3):380-386. doi: 10.1016/j.parint.2010.05.002.
Palacpac NM, et al. Phase 1b randomized trial and follow-up study in Uganda of the blood-stage malaria vaccine candidate BK-SE36. PLoS One. 2013:8(5):e64073. doi: 10.1371/journal.pone.0064073
Tougan T, et al. TLR9 adjuvants enhance immunogenicity and protective efficacy of the SE36/AHG malaria vaccine in nonhuman primate models. Hum Vaccin Immunother. 2013:9: 283-90. doi: 10.4161/hv.22950
Yagi M, et al. Antibody titres and boosting after natural malaria infection in BK-SE36 vaccine responders during a follow-up study in Uganda. Sci Rep. 2016: 6:34363. doi: 10.1038/srep34363.
Tougan T, et al. Molecular camouflage of Plasmodium falciparum merozoites by binding of host vitronectin to P47 fragment of SERA5.Sci Rep.2018:8:5052. doi:10.1038/s41598-018-23194-9.
最終報告書
1.プロジェクトの目的
本プロジェクトは、赤血球期マラリアワクチンSE36(BK-SE36 / CpG)の臨床開発を進めるために構築された。本プロジェクトは、マラリアに暴露されたブルキナファソの住民にBK-SE36 / CpG全用量を3回筋肉内投与した後、12か月間にわたり安全性と免疫原性を実証しようとしたものである。
2.プロジェクト・デザイン
本治験は、二重盲検、単一投与量、ランダム化、対照、低年齢移行の第Ib相臨床試験である。健康な被験者135人を、21〜45歳n=45、5〜10歳n=45、及び、12〜24か月n=45の3つのコホートに振り分け、ワクチン群と対照群に2:1の比率でランダム化し、3回のワクチン接種をし、1年間観察する。
3.プロジェクトの結果及び考察
ブルキナファソで実施された第Ib相臨床試験では、BK-SE36 / CpGマラリアワクチンを全用量で3回投与したところ、軽度から中等度の局所および全身性の有害事象を伴う許容可能な安全性が示された。どの年齢群でも安全性の懸念は提起されず、安全性プロファイルは対照の狂犬病ワクチン群と同等であった。3回目の投与では、すべてのコホートで抗SE36 IgG抗体価が高くなった。また、これまでの予想通り、最年少のコホートは最も高い抗SE36 IgG抗体価を示した。
BK-SE36 / CpGワクチン接種者の血清のエピトープマッピングでは、すべてのコホートにおいてSE36タンパク質にまたがる合成ペプチド7-9に対して優勢な反応性を示した。若いコホートからの血清ではより多くのペプチドに対して反応性を示した。これらの血清は SE36の天然変性領域に最も高い反応性を示した。
マラリア発症リスクの低下傾向(最初または唯一のエピソードおよび複数のエピソード)は、BK-SE36 / CpGワクチンを接種したコホート2の被験者でのみ見られた。コホート1および3では治験期間中に報告されたマラリアの症例が少なかった。サンプルサイズが小さいためその解釈には注意を要するが、観察された発熱と熱帯熱マラリア原虫率(≥5000/µL)に基づく臨床マラリアの発生率は、対照と比較してBK-SE36 / CpGワクチン接種群で統計的に優位な低値を示した(0.26、p = 0.024最初のまたは唯一の、およびすべてのエピソードの0.31、p = 0.055)。これらの結果は、BK-SE36 / CpGの概念実証治験の実施を強く支持するものである。
Investment
プロジェクト
BK-SE36/CpG マラリアワクチンの臨床開発: マラリア流行地域住民でのBK-SE36/CpG の安全性評価