Investment

プロジェクト

DSM421を用いた臨床開発試験(第IIa相へ進むための判断)
Project Completed
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  • 受領年
    2016
  • 投資金額
    ¥749,982,252
  • 病気
    Malaria
  • 対象
    Drug
  • 開発段階
    Preclinical development
  • パートナー
    武田薬品工業株式会社, Medicines for Malaria Venture (MMV)

イントロダクション/背景

イントロダクション

世界では現在も30億人以上もの人々がマラリアの脅威に晒されており、幼児を中心に毎年50万人以上の死亡が報告されています。過去十年間の様々な取り組みによって、新世代の抗マラリア医薬候補品の幅広いポートフォリオが作り上げられました。マラリア原虫DHODH (ジヒドロオロト酸脱水素酵素) 選択的阻害剤であるDSM265(リード化合物)とDSM421(バックアップ化合物)もその中に含まれます。

 

DSM265は、2014年に第I相臨床試験に入り、単回投与療法で熱帯熱マラリア(P. falciparum)に対する効果が患者様で実証されています。しかし三日熱マラリア原虫(P. vivax)に関しては、同用量あるいは高用量のDSM265を用いても同等の除去効果が見られませんでした。DSM265のバックアップ化合物を創製する戦略では、以下の二点を改善する事が盛り込まれています。

- 熱帯熱マラリア原虫および三日熱マラリア原虫に対する同等の有効性

- 溶解性を高め、製剤処方を単純化することによる製造原価のコスト削減

 

候補化合物DSM421は、マラリア原虫DHODHの強力な阻害剤であり、優れた抗寄生虫活性をin vitroおよびin vivoの試験で示しています。 DSM265とは対照的に、DSM421は、臨床分離株を用いたex vivo試験で、熱帯熱マラリア原虫および三日熱マラリア原虫に対して同等の薬効を示しました。またDSM421の溶解度は、DSM265と比較して大幅に改善され、単純で安価な製剤設計が可能となりました。

 

プロジェクトの目的

DSM421は、現在第IIa相で臨床試験を行っているDSM265のバックアップ候補化合物です。DSM421はMMVのポートフォリオに含まれる前臨床候補化合物であり、熱帯熱マラリア原虫および三日熱マラリア原虫に対して、単回投与による根治治療(SERC)あるいは化学的予防の一端を担う可能性を有しています。DSM421はヒト体内で緩やかに消失し、長時間の作用を示す薬物であると予測されています。

今回の提案による主要な目的は、DSM421を臨床第Ib相のチャレンジ試験まで進め、単回投与による根治治療(SERC)薬あるいは化学的予防薬として開発を進めるか否かの判断を行うことです。

 

プロジェクト・デザイン

この提案の全体的な目標は、第I相臨床試験でDSM421の安全性を評価し、第Ib相臨床試験のチャレンジテストで有効性を評価することです。また、第IIa相臨床試験へ進むための非臨床毒性試験の実施も含まれます。プロジェクト・デザインは、以下の6つで構成されます。

1) DSM421を健康な被験者に投与した時(ファースト・イン・ヒューマン試験)の安全性、忍容性および薬物動態を検証する。

2) 誘導赤血球期マラリアチャレンジ試験 (IBSM) において、熱帯熱マラリア原虫および三日熱マラリア原虫の赤血球期に対するDSM421の活性を評価する。

3) コントロールされたヒトマラリア感染試験(CHMI)において、熱帯熱マラリア原虫の肝潜伏期に対するDSM421の活性を評価する。このモデルでは、化学的予防薬としてのDSM421の活性も確認することでできる。

4) 上記2と3の結果に基づいて、赤血球期感染の治療、あるいは化学的予防薬のどちらの適用を目指して第IIa相試験を行うかどうかを決定する。

5) 上記の第I相臨床試験に用いるための治験薬を製造する。

6) 第IIa相臨床試験(治療または化学的予防)を開始するために必要な非臨床安全性試験を完了する。また、妊娠中の女性が使う可能性があるため、胚発生毒性試験を実施する。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

マラリアは毎年2億人以上が感染し、2015年には感染による死者数は43万8千人と報告されています*。予防や治療が可能な疾患にも関わらず、これは依然として許容できない高い数値です。マラリアによる死亡の88%はサハラ砂漠以南のアフリカで起こっています。主に熱帯熱マラリア原虫により媒介され、世界で5歳以下の子供30万人が命を落としています1

三日熱マラリア原虫感染は、同様に重大な健康問題を起こします。2015年には三日熱マラリア原虫による感染が1380万例以上報告され、マラリアに起因する死亡の50%以上はアフリカ外で起きています1

さらに、既存の抗マラリア薬や殺虫剤に対する抵抗性の出現が、マラリア対策や駆除の急速な進展に対する脅威となっています。併用療法ACTsの主要化合物であるアルテミシニンに対する寄生抵抗が東南アジア5カ国:カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナムで見つかっています。

新規マラリア治療の開発における最優先課題は、増大しつつある薬剤抵抗性を克服し、治療遵守を向上させるため、単回投与による根治治療(SERC)に使用できる新世代の薬剤を提供することです。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

DSM421はマラリア原虫DHODHに対する特異的で強力な阻害剤であり、マラリアの治療や化学的予防に関して新しい作用機序を有しています。DSM421はDSM265のバックアップ候補化合物であり、DSM265や他の抗マラリア薬と異なる特徴を有しています。

1)  DSM421は、臨床分離株を用いたex vivo試験で三日熱マラリア原虫および熱帯熱マラリア原虫に対して同等の薬効を示し、DSM265が三日熱マラリア原虫感染の治療に使用できないという欠点を克服しました。

2)DSM421は合成することが簡単で、DSM265に比べて溶解度が改善するなど、薬として適する特徴を備え、よりシンプルでコスト効率の高い製剤が可能となります。

3)DSM421は予測される血中半減期が長く(ヒトで約83時間)、寄生虫が除去されるまで化合物を血中で持続することができます。

4)DSM421は新規の標的を阻害します。DHODH(ジヒドロオロト酸脱水素酵素)は、以前は抗マラリア化学療法の標的として利用されませんでした。DSM421は今までと異なった治療作用機序を有することから、既存薬剤への耐性株に対しても活性があり、また現在の治療法に対して耐性株が出現した場合でも効果を有することが期待されます。

各パートナーの役割と責任

MMVはこの提案の指定被譲与者として、同意されたスケジュールと予算に対して作業計画を作成し、必要とされる報告をGHITに行う責任があります。プロジェクトは、プロジェクトディレクター、MMVおよび武田薬品の科学者によって構成され、さらに特定の事項に関してはアッヴィ社員やコンサルタントの人的援助を得ます。これにより、プロジェクトチームはすべての活動に対して責任を負うこととなります。試験はMMV、武田薬品、治験責任医師、臨床モニターの協業で実施されます。武田薬品は、プロジェクトチーム内で、非臨床及び臨床科学、臨床業務、規制当局および倫理的な承認プロセス、CMCおよびその他の科学的側面に関して助言を行います。

他(参考文献、引用文献など)

1. WHO. World Malaria Report 2015. WHO (2015)

最終報告書

1.プロジェクトの目的

マラリアは毎年50万人が死亡すると報告されており、未だに健康に対する大きな脅威です。現在の治療法に対して耐性が新たに出現しつつあることからすると、マラリア撲滅には新世代の抗マラリア薬が必要です。DHODH 阻害剤はこの目的のためには有望な候補です。

 

DSM265 は、現在フェーズ 2a の段階にあり、このカテゴリーをリードする化合物です。この化合物は、熱帯熱マラリア (P.falciparum) に対する単回投与治療としての効力が最近、患者で証明されています。P.vivax については、DSM265 では同等の排除を達成できないため、熱帯熱マラリア (P. falciparum, Pf) と 三日熱マラリア原虫 (P. vivax, Pv) に対して同等の効力を持つバックアップ化合物が非常に望まれています。

 

前臨床段階の候補化合物 DSM421 にこの可能性があります。この化合物は、強力なプラスモジウム DHODH 阻害剤であり、ex-vivo アッセイでは優れた抗寄生虫活性と、Pf  Pv の分離株に対して同等の効力を示し、溶解度が改善されているため、単純で低コストの処方が可能となります。

 

本プロジェクトの目的は、健常ボランティアを対象とした First-in-Human 試験とフェーズ 1 チャレンジ試験を統合した試験で、DSM421 の安全性と忍容性を評価し、その効力を評価することです。

 

 

2.プロジェクト・デザイン

1. First-in-Human 試験 (FIH)  DSM421 の安全性、忍容性および薬物動態を記録します。

2. 誘導赤血球期マラリアチャレンジ試験 (IBSM) において、Pf  Pv に対する、DSM421 の赤血球期活性を評価します。

3. ヒトマラリア感染対照試験 (CHMI) において Pf に対する、DSM421 の肝臓感染ステージの活性を評価します。このモデルでは、化学保護物質としての活性を確認することが可能です。

4. ポイント 2 および 3 の転帰に基づき、フェーズ 2a 試験で、赤血球期感染症の治療、または化学的保護を効能とするかを決定します。

5. 上記フェーズ 1 試験をサポートするために治験薬を製造します。

6. フェーズ 2a 臨床試験 (治療または化学的予防) をサポートするために、必要な非臨床安全性試験を完了し、妊娠女性で使用される可能性を考えて DSM421 の胚・胎児安全性を評価します。

 

 

3.プロジェクトの結果及び考察

ヒトに初めて DSM421 を安全に投与するために、保健当局からは、フェーズ 1 試験に加わる健常ボランティアに対する安全性リスクを制限する前臨床毒性パッケージの完了が要求されています。

 

このフェーズの間、DSM421 がイヌで低~中等度の神経変性を引き起こすことが発見されました。健常ボランティアが FIH 試験中に同様のリスクに曝されることを確実に避けるために、このようなダメージがヒトで可逆的かつモニター可能なものであることを示す必要があります。可逆性は、新規の GLP 毒性試験に長期の回復期間を加えることで評価可能であり、モニター可能性は神経伝導研究によって可能となる可能性があります。しかし、新たな GLP 毒性試験によってプロジェクトのコストは増加し、ヒトで神経伝導評価が必要なため、FIH 試験が複雑化します。

 

別の予想外の知見によって、健常ボランティアの安全性に対するリスクが増加しました。DSM421 の呼吸機能に対する効果を評価することを目的とした前臨床試験において、他の多くの試験でha忍容性が認められた用量を投与した際にラットが死亡しました。これは、被験者に対するストレスの原因となることが知られている特定の実験条件に限定された、孤立したイベントでした。これがヒトで発生する可能性を評価することは困難ですが、このようなリスクをとることはできません。

 

このような 2 つの問題が原因で、DSM421 の投与には試験ボランティアの健康に対するある程度のリスクがあると推定されました。このリスクは、広範囲に渡る高価な予防法を用いても、完全に避けることはできません。従って、フェーズ 1 の開始前に、DSM421 の開発をさらに進めるのは中止すると決定しました。

毒性評価と並行して、DSM421の適切かつ単純な処方開発を試みました。このような努力は特にうまくいき、創製した錠剤プロトタイプは血中への吸収性が高いことが示されました。これは DSM421 にとっては非常に好ましい結果であり、継続した臨床開発をサポートする一方で、DSM421 の開発停止の原因となる安全性リスクは軽減していません。