Investment

プロジェクト

結核菌に対するスクリーニングのヒットの開発
  • 受領年
    2015
  • 投資金額
    ¥79,216,549
  • 病気
    Tuberculosis
  • 対象
    Drug
  • 開発段階
    Lead Identification
  • パートナー
    武田薬品工業株式会社 ,  The Global Alliance for TB Drug Development
  • 過去の案件

イントロダクション/背景

結核はこれまでに言い知れぬ数の犠牲者を出してきましたし現在でも出し続けております。WHOの統計によりますと2014年には950万人ひとが新しく結核に罹り150万人のひとが命を失いました。このような膨大な人的犠牲にもかかわらず現在の治療は難しく長期に及びます。また耐性菌による結核では治療はより難しく場合によっては 有効な治療法が存在しません。多薬耐性菌(MDR)による結核患者の完治率は5割程度です。患者の苦しみはもちろん政府や医療機関における重大な問題となっております。この度の武田薬品とTB Allianceの共同研究は武田薬品の所持している化合物の中から新しい結核の薬のシードとなるものを見つけるべく実施されたスクリーニングで見つかった化合物を創薬の次段階のヒットからリードへ進める試みです。  

この共同研究は武田薬品の二万の化合物のスクリーニングで見つけられたヒットをより深く研究し新しい作用機構を持った結核の新薬の発展に貢献する事を目的としたものです。新しい誘導体のデザイン、合成、結核菌に対する活性の有無、薬剤代謝や安全性の実験が含まれております。

このプロジェクトは武田薬品のノウハウに基いてデザインされた化合物を 中国のCROによって合成し イリノイ大学で結核菌に対する活性を調べる事を基本としてデザインされたものです。さらに有望な誘導体は代謝や安全性をCROにより調査し 最も有望な化合物を動物実験で結核に対する効果を示し薬剤開発のリードを同定する計画です。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

新しい作用機構の薬をいままで注目されなかった世界市場に提供し結核の治療に貢献したいと考えております。耐性菌に効く薬と治療時間を短くできる薬によって患者の受け入れやすい治療法を見つけより多くの患者の完治が望まれます。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

武田薬品は薬剤開発に大きな組織的知識を持っておりそれをグローバル・ヘルスへ転用することによりより有効な治療法の開発に貢献できると考えております。TB Allianceは世界各国の結核の研究の知識を持ち合わせておりそれらを結び合わせて新薬の開発に貢献できる事を願っております。

各パートナーの役割と責任

武田薬品の研究者はこれらのヒット化合物に関してこれまでの研究の経験や知識を持っておりそれに基いてて新しい誘導体のデザインに協力し、TB Allianceは結核の分野における研究者のネットワークを持っており、それに基いて新しく合成された化合物の結核菌に対する活性、薬剤代謝、安全性のテストを行い、最終的には動物実験のコーディネーションを行う予定になっております。

最終報告書

1. プロジェクトの目的

本プロジェクトは、抗結核作用を示すリード化合物創出を目的とし、2016年7月に開始されました。2013年に実施した2万化合物のスクリーニングプログラムにおいて、病原性結核菌に対して有効性を持つヒット化合物として同定された3つのケミカルシリーズ(ピペラジン尿素誘導体、インドリンアミド誘導体、二環式トリアゾール)の構造最適化を主に行いました。

 

2. プロジェクト・デザイン

新規化合物のデザインは、武田薬品とTBアライアンスが協働して行い、合成は中国のWuxi及び武田薬品にて行いました。すべての化合物の抗結核作用をイリノイ大学にて調べ、活性が認められた化合物に対し更なるプロファイリング(物性、代謝安定性、薬物動態等)をBioDuro、Wuxi及び武田薬品にて実施しました。

 

3. プロジェクトの結果及び考察

始めに、ピペラジン尿素誘導体及びインドリンアミド誘導体の構造最適化を検討しました。200以上の新規化合物の活性を評価した結果、細胞系における抗結核作用の改善が認められなかったため、プロジェクト中盤にてこれら2つのケミカルシリーズの開発を中止し、二環式トリアゾール誘導体の開発に重点を置くという判断をしました。同ケミカルシリーズの構造最適化段階にて、細胞系における抗結核作用が強力かつ安全な非縮環式ビピリジン誘導体をサブシリーズとして創出することができました。また、ビピリジン誘導体全般をプロファイリングし、主な課題は代謝安定性の改善であることを同定しました。この成果は2019年に提出した新たなヒットトゥリードプログラム提案の基礎となりました。本プロジェクトでは上記3つの誘導体の構造最適化と並行して、ターゲットベースのスクリーニングをいくつか実施し、武田薬品が所有するタンパク合成阻害剤の化合物コレクションからヒットとなり得る化合物群を見出しました。更なる取り組みについては、上記新規提案プログラムに組み込まれました。本プロジェクトの後継となる新規提案は、2019年4月に提出され2019年7月に承認されました。

プロジェクトから学んだ教訓について以下に述べます。2万化合物の表現型スクリーニングによって同定されたヒット化合物群の中から、バックアップシリーズとなり得る化合物群を早急に準備することができず、最初に着手した2つのケミカルシリーズを中止するという決定に長い時間がかかりました。その後、タンパク合成阻害剤を見出した例のように、短期間で新たなヒット化合物を創出するためには、グローバルなパートナーシップをより強化し、多様なアプローチにより小さな化合物ライブラリセットのスクリーニングを継続することが大変有用でした。