Investment

プロジェクト

全自動マラリア診断システムの開発と蔓延地域での評価
Project Completed
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  • 受領年
    2015
  • 投資金額
    ¥96,450,000
  • 病気
    Malaria
  • 対象
    Diagnostic
  • 開発段階
    Product Validation
  • パートナー
    長崎大学熱帯医学研究所(熱研), 順天堂大学, ケニア国立医学研究所, マラリアノーモアジャパン, 産業技術総合研究所, パナソニック株式会社

イントロダクション/背景

イントロダクション

ギムザ染色法は、染色した原虫を顕微鏡下で直接的に観察できる標準検査方法です。しかしながら、この方法は前処理時間と熟練した技術を要し、遠隔地での診断には適していません。一方、既存の迅速診断法(RDT)は、定性的な診断法で偽陽性の発生が課題です。これらの方法では診断できない低原虫感染率を示す無症候マラリア感染者は、感染を誘発するキャリアとしてマラリアを撲滅するうえで大きな課題となります。このような感染者を見つけるには、高い検出力、感度、特異度を持った診断システムの開発が必要です。これまで、我々は、上記課題を解決すべく、ギムザ法の200倍の高感度と高い特異性、迅速性(10分/サンプル)を持った診断システムの開発を目指してきました。本システムは、原虫感染率の定量測定が可能で、さらに、本システムは全自動であり、熟練技術不要であることから人為的ミスを抑えることができます。今、このシステムは、マラリア流行地域での検証の準備段階に入りつつあります。

 

プロジェクトの目的

無症状マラリア感染の大半は、顕微鏡とRDTの検出限界以下であり、地域によっては感染者の50%以上を占めています(図1)。よって、プロジェクトでは、流行地域における診療所と病院において、現実的に使える新しいマラリア診断システムを開発することを目的とします。そして、最終的に医療従事者が採集した血液を装置に添加するだけで、マラリア原虫を自動検出できるシステムを開発することです。本システムは、光ディスクの技術を応用することで、原虫のみを検出するようにするため偽陽性を最小限(1%以下)に抑えることができます。本プロジェクト終了後は、より高い感度を実現し(0.00005%)、撲滅を目指す上で有効なシステムへと改良を進めることを目指します。

 

図1マラリア診断システムの役割

 

プロジェクト・デザイン

このマラリア診断システムは、主に3つの機能を備えた全自動診断システムです。その機能は、白血球除去、赤血球の単層配置そしてマラリア原虫の定量測定です。白血球除去の機能は、使い捨てのコンパクトディスクに内蔵し、ディスクをDVDプレーヤーで回転させることにより血液を流してフィルター処理を実現しています。これにより、赤血球のみを回収するとともに単層に配置し、原虫のDNAを蛍光色素で染色しています。そして、赤血球の数とマラリア原虫が寄生した赤血球由来の蛍光スポットの数を画像処理ソフトにより読み取ることによって定量測定を実現しています。本システムは、アフリカのマラリア流行地域において検証を行うとともに、最終的には、現地の医療施設で使用してもらいながら評価を行います。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

本システムは、マラリアの流行地域における現在の診断の状況を劇的に改善することができます。マラリア流行時には、短期間に多くの患者を診療する必要があり、多検体を同時に測定できることから、医療従事者と患者にとっては、とても便利な装置です。定量検出は、正確な診断と適切な処理を行うことができ結果的に医療費の削減にも繋がります。ここ10年間の国際努力により、マラリアの犠牲者は、明らかに減少しました。現在、いくつかの流行国は、マラリアの撲滅に注力しており、マラリアの感染は極端に低くなっています。しかしながら、無症候マラリア感染者の中には、原虫感染率が顕微鏡の検出限界以下の人が多く、現在用いられている診断法では原虫を見つけることができないため、マラリアを流行させる原因ともなっています。このような患者を集団検診などで見つけ出し、治療する方法は、Mass Screening and Treatmentと言われており、マラリア根絶には非常に重要です。本プロジェクトの達成により、これまで不可能だったMass Screening and Treatmentが可能になり、マラリア根絶がいよいよ現実のものとなってきます。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

CD型スキャンディスク上に僅か2 μlの血液を添加するだけで、SiO2ナノファイバーを用いたろ過による赤血球分離、蛍光核染色液によるマラリア原虫核の蛍光染色、さらにイメージリーダーによる蛍光検出で、マラリア感染赤血球の正確な定量検出が短時間でかつ全自動で可能になります(図2)。マラリア検出感度は原虫2 個/ 1 μl(血液)とゴールドスタンダードとされる血球ギムザ染色の光学顕微鏡検査法より二桁以上の超高感度で、無症候マラリア患者を見つけることができます。さらに、99.9%以上という白血球除去技術と画像処理技術により、偽陽性、および偽陰性の発生確率を1%以下にできる可能性があります。マラリア原虫の供給者となり、従来の診断方法ではその発見が難しい無症候マラリア患者を見つけて治療に結びつけることで、将来のマラリア撲滅に貢献できる診断装置です。  

 

 

図2. 最終的なマラリア自動診断システム。

各パートナーの役割と責任

パナソニックは、プロジェクトリーダーでありプロジェクト全体の進捗を管理する主研究者です。パナソニックは、血球分離デバイス、原虫検出のための細胞チップそして蛍光検出装置を開発します。 順天堂大学は、高感度検出の原理の開発とフィールドテストを産業技術総合研究所と協力して行います。順天堂大学は、またマラリア原虫の種の判別技術開発と診断のための課題抽出を行います。さらに、フィールドテストの統計学的評価を行います。 産業技術総合研究所は、順天堂大学と協力して高感度検出技術の開発を行います。 産業技術総合研究所は、マラリア原虫の種の判別技術とオンチップPCR技術の開発を行います。 長崎大学熱帯医学研究所は、パートナーと協力してフィールドテストにおいて本技術の評価を行います。長崎大学熱帯医学研究所は、ケニアにおけるフィールドテストの指導を行います。さらに、本診断システムのフィールドテストの先導を行い、オンサイトでの評価やプレクリニカルテストでの倫理面での管理を行います。マラリアノーモアジャパン(MNMJ)は、フィールドテストにおけるコンサルティングやアフリカにおけるマーケティングを担当します。 ケニア国立医学研究所(KEMRI-CGHR)は、 フィールドテストとプレクリニカルテストの実施を先導します。さらに、本システムの課題抽出とオンサイトにおける倫理面での管理を担当します。

最終報告書

1. プロジェクトの目的

顕微鏡とRDTの検出限界以下のマラリア原虫を自動検出できる診断技術の開発を目的に3つの要素技術を開発した。ワンステップフィルターデバイス、細胞チップ、バッテリー駆動の測定システムです。本システムは、血液をセンサディスクに添加するだけでマラリア原虫を検出できる蛍光測定、信号解析の2機能を備えている。

 

2. プロジェクト・デザイン

パナソニックは、本プロジェクト全体のマネジメントと血球分離デバイス細胞チップ、蛍光検出装置の開発を行いました。AISTは、マラリア原虫の高感度検出原理の開発を行い、順天堂大学、長崎大学、KEMRIは、フィールドでの評価、解析を行いました。マラリアノーモアジャパンは、マーケティング調査を担当しました。

 

3. プロジェクトの結果及び考察

血球分離フィルターを備えた細胞チップ

我々は、血球細胞のサイズと吸着特性を利用した血球分離デバイスを開発しました。本デバイスの分離能力は、白血球除去率99.9%以上、赤血球の回収率40%以上を実現しています。細胞チップは、複数のユニットを連結していて遠心力によって血球分離後、赤血球は、単層を形成して蛍光色素でマラリア原虫のDNAは、染色されます。染色された原虫は、蛍光スポットとして検出され、逆に赤血球は、黒い影として検出されます。これにより、赤血球数とマラリア原虫の数を測定することができ、定量測定を可能にしました。この診断デバイスは、1ディスクで9検体の血液を同時に診断できる特徴があります。

測定システムの開発

我々は、PCで制御する測定システムを開発しました。本システムには、システム制御用のソフトウエアを搭載しており、ディスクの回転制御と上述したようにマラリア原虫を定量的に測定することを可能にしております。

全体的な測定フローは、以下のようになっています。 (1)血液サンプルをキャピラリーにより採取し、50倍に希釈(2) 希釈血液をセンサディスクに導入(3)センサディスクを測定装置にセット (4) 測定装置が赤血球数と蛍光スポット数を検出 (5) コンピュータは、マラリア感染率を計算し、ディスプレイに表示。

本マラリア診断システムの評価は、アフリカやメラネシアのマラリア流行地域において採取した患者血液を用いて行った。

我々は、東アフリカにおけるマラリア診断のマーケティングを行った。

この活動により、コンベショナルな診断方法であるRDT、顕微診断、PCRと比較して本システムのターゲットを明確にしました。そして、マーケティング戦略の仮説として提案しております。

本システムの開発は、本プロジェクトにおいてプロトタイプまで完成した。今後、ユーザビリティの再検証と感度向上が必要と考える。また、ターゲット市場は、RDT、顕微診断との棲み分けと薬剤効果モニタリング市場の開拓が必要と考える。