Investment

プロジェクト

土壌伝播蠕虫を対象としたCry5Bコンソーシアム
  • 受領年
    2015
  • 投資金額
    ¥100,299,625
  • 病気
    NTD (Soil-transmitted helminthiasis)
  • 対象
    Drug
  • 開発段階
    Lead Optimization
  • パートナー
    Meiji Seika ファルマ株式会社, マサチューセッツ大学医学部, PATH

イントロダクション/背景

イントロダクション

土壌伝播蠕虫病感染(STH)は、世界で最も貧困・困窮する約20億人に寄生すると考えられ、グローバルなヘルスケアの最も重要な課題の一つです。STHは、乳児死亡率を引き起こす可能性がありますが、最大の影響は、貧血や栄養失調に起因する疾患にあると考えられています。世界保健機関(WHO)は2013年に、流行国で3億680万人以上の学童が駆虫薬で処置されたと推計していますが、これはリスクのある子どものわずか42%にすぎません。2010年には、STHの影響は500万障害調整生命年と推定されました。

 

プロジェクトの目的

このプロジェクトの目的は、土壌伝播蠕虫(STH)のための新しい治療法としてCry5Bタンパク質の開発を試みることです。Cry5Bは、Mass Drug Administration(MDA)キャンペーンを通じてSTHの治療・管理を改善することができる、微生物バチルス・チューリンゲンシス(BT)に由来する強力な、天然に存在する駆虫タンパク質です。 STH感染症の動物モデルでは、Cry5Bタンパク質の精製品および結晶を含有する細胞溶解物ともに、in vitroで複数の腸内線虫に対する効力を示し、モル比では既存治療薬のアルベンダゾールより100倍の効果を示しました。Cry5Bタンパク質は、経口投与でも吸収されないため、他の市販のBt由来結晶タンパク同様安全である可能性が高いことが想定されます。 このプロジェクトで提案された作業は、次の3つの目的があります: 1) Cry5Bタンパク質を発現するための適切な微生物菌株を開発 2) Cry5Bタンパク質を増殖させるための発酵プロセスを開発 3) Cry5Bタンパク質の精製方法を探索・開発

 

プロジェクト・デザイン

各コラボレーションパートナーは、このプロジェクトでユニークな役割を果たします。 PATHは、グローバルヘルス革新のリーダーです。PATHは国際非営利団体として、女性や子供たちの命を救い健康を向上させることをミッションとしています。 PATHは、起業家のインサイト、科学および公衆衛生の専門知識、このプロジェクト実現のための情熱、また、グローバルヘルスへの40年以上の経験で貢献します。 味の素(株)は、高品質の調味料、加工食品、アミノ酸、医薬品、化学品の世界的なメーカーです。何十年もの間、味の素(株)は、アミノ酸技術の幅広い応用を通じて食文化と人間の健康に貢献してきました。 1908年にうま味物質・グルタミン酸ナトリウムの事業化以来、味の素はアミノ酸と発酵技術のパイオニアとして経験・蓄積を有します。 Meiji Seikaファルマ(株)は、新薬とジェネリック医薬品、農薬や動物用医薬品を事業とする企業で、1946年にペニシリンの生産を開始して以降、これら事業領域の製剤及び原薬に関する豊富な開発経験を有します。 マサチューセッツ大学医学部(UMMS)のラフィ・アロイアン博士はCry5Bタンパク質における第一人者です。彼の研究室ではCry5Bとその作用メカニズムを初めて解析することに成功しました。当初から、アロリアン博士は、グローバルなSTHの問題への重大な解決策としてCry5Bの可能性を追求しています。彼の研究室では、Cry5Bの寄生線虫症に対する有効性を試験するために必要な動物実験モデルを確立しています。また、同研究室は、他の微生物でCry5Bを発現するための試薬とツールを有しています。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

現在、STH感染症の治療に用いられている薬剤は獣医薬局方から採用されており、30年以上の間、新たな薬剤は全く発売されていません。STHに対する集団薬剤投与の運動において最も広く使用されている薬剤(ベンズイミダゾールやアルベンダゾール、メベンダゾール)は耐性の増加に脅かされています。家畜の寄生線虫治療において、レバミゾールのようなコリン作動性薬剤は既に効果がなくなっています。 現在承認されている全ての駆虫薬のプロファイルにおける重大な欠陥は、妊娠初期の女性には禁忌とされていることです。そのため、母親と胎児はSTHが引き起こす貧血や栄養失調の影響を受けやすくなり、また、治療的介入が行えない状態になっています。 Cry5BはSTH感染症を治療するための、優れた選択肢となるでしょう。理由は下記の通りです。

1) モデル線虫であるC. elegantsでは、Cry5Bの作用は既存の薬剤(ベンゾイミダゾールやコリン作動性薬剤)に対する耐性に影響されません。

2) Cry5Bは既存薬剤との併用療法の一部となり得ます。Cry5Bはいくつかのコリン作用性薬剤と相乗的に作用します。それらのコリン作用性薬剤に対する耐性は、STHにCry5Bに対して過敏感反応を起こさせます。

3) 非吸収性の蛋白質製品であるCry5Bは、無脊椎動物にしか存在しないとされている標的に結合するため、妊婦や幼児を含む全ての患者に対して安全であることが期待されます。

4) Cry5BをBacillusのプロバイオティクス菌株の中において高レベルで発現できれば、駆虫とプロバイオティクスの両効果をもった製品を作り出すことができるかもしれません。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

 Cry5Bは、既存薬剤に対する耐性に影響されない固有の作用機序を持った、全く今までにない駆虫薬です。非吸収性の治療薬として、Cry5Bは優れた安全性プロファイルを有していることも期待できます。しかしながら、蛋白質製品であるため、Cry5Bの商業スケールでの生産もまた特有の課題を示します。

この課題を乗り越える機会を増やすため、私達は幾つかの方法を含む複数方面からの戦略を採っています。つまり、菌株改良の伝統的法方法や培養条件の最適化、また異種の遺伝子組換え微生物発現システムを含む、より高度な方法です。

 

各パートナーの役割と責任

味の素(株)は、Cry5Bの生産の改良の可能性を検討します。検討には、Dr. Aroianが既に構築したCry5Bを発現するBacillus株をひとつ以上用います。加えて、独自の細菌発現システムを用いてCry5Bの生産を試みます。 Meiji Seika ファルマ(株)とその委託先は、更に2つの独自の微生物の発現システムを用いてCry5Bの生産を試みます。 PATHはプロジェクトを取りまとめ、管理します。また、幾つかの菌種を用いた取り組みの内、最も有効と思われるものを決定します。 Dr. AroianとUMMSにある彼の研究室は、味の素(株)とMeiji Seika ファルマ(株)で生産されたCry5Bのサンプルを分析し、駆虫活性を検証します。