Investment

プロジェクト

MMVとエーザイの協働による新規抗マラリア剤リード化合物の創出
Project Completed
 

イントロダクション/背景

マラリアはPlasmodium属の原虫によって引き起こされ、年間にアフリカの子供達を中心に約60万人の死者を出す疾患である。さらに、近年は第一選択薬であるアルテミシニンに対する耐性が出現している1, 2。十分な効果を示すワクチンもいまだ確立されておらず、薬剤治療が重要である。マラリア撲滅に向けて、Medicines for Malaria Venture (MMV)では目指す薬剤像(TCP)および薬剤に含まれる成分としての目指す化合物像(TCP)を提唱し3、エーザイでは複数のプロジェクトを開始してMMVと協働してきた。

本プロジェクトの目的は、現在得られているヒット化合物について最適化を行い、新規作用機序を有するリード化合物を創出することである。エーザイとMMVはGHIT Screening Platformにおいてエーザイの化合物ライブラリーから複数のヒット化合物群を同定した。また、エーザイ独自の抗マラリア剤プロジェクトにおいて、新規の作用機序であるGPI生合成阻害剤を同定した。製薬企業であるエーザイの化合物と経験をMMVの専門性と融合し、新たな治療薬開発につなげていく。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

新規作用機序および複数の薬効を有するリード化合物を提供することで、将来的に多くの子供達の命を救う新薬の創出につながることを期待している。感染症の制御においては薬剤治療とワクチンによる予防、媒介動物の制御等がいずれも重要である。マラリア対策においてはこれまで、2015年に屠教授がノーベル賞を受賞したアルテミシニンを筆頭に薬剤治療が劇的な進化を遂げる一方で、耐性の蔓延が問題となってきた。本プロジェクトの目的は、新薬創出に向けて新規作用機序を有するリード化合物を創出することである。現在、薬剤治療の最終目標は単回投与での治癒と予防であり、これに向けたTPPとTCPが設定されている。望まれる治療薬を規定するTPP-1では、合剤の成分として含有すべき化合物群に抗マラリア活性(TCP-1および2)および肝臓での再燃防止(TCP-3a)、伝播阻止(TCP-3b)の活性を求めている3。本プロジェクトの起点となるヒット化合物群はいずれも、抗マラリア活性を示すことに加えてTCP-3aまたは3bで要求される活性を有することが予想される。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

本プロジェクトの特徴は、既存薬とは異なる新規作用機序と、多段階の薬効の両方を兼ね備えたリード化合物を目指すという点である。これらの目標を達成するために、異なるアプローチから得られた複数のヒット化合物群を起点として、リード化合物創出を目指す。まず作用機序については、これらのヒット化合物群の多くは既存の抗マラリア剤とは異なる化学構造を有しており、新規の作用機序を有することが期待される。すでに、新規の作用機序を指標にして同定されたGPI生合成阻害剤も手にしている。次に薬効については、GHIT Screening Platformからのヒット化合物群は、原虫の生活環の2つ以上に作用することが確認されている。GPI生合成阻害剤については、文献情報より複数の生活環に作用するものと考えられる。我々は、新規作用機序化合物が既存薬に耐性を持つ原虫へも効果を示し、原虫の複数の生活環に作用することにより、伝播阻止等の効果を併せ持った薬剤につながることを期待している。

なお、GPI生合成阻害剤については、エーザイが独自にGPI生合成経路から見出した酵素4-7が薬効標的であり、同様の作用機序を有する抗真菌化合物が臨床開発の準備段階にある8-10

各パートナーの役割と責任

エーザイは、マラリア治療の新規候補化合物を提供するために、MMVと共同して本プロジェクトを推進しています。エーザイは、その高い創薬技術基盤を活用し、新規抗マラリア薬候補化合物を合成するとともに、それら化合物の抗マラリア活性の初期評価、物理化学的評価、体内動態評価、初期安全性評価を行い、リード化合物の創出を図ります。

 

MMVは、抗マラリア薬の創薬に関する専門知識や戦略的な助言を提供し、エーザイと共同して、本プロジェクトを進めます。さらにMMVは、MMVネットワークのパートナー研究機関とプロジェクトチームを連携させ、プロジェクトで見出された候補化合物の各種抗マラリア活性データを取り、プロジェクトの意思決定に役立てます。

 

他(参考文献、引用文献など)

References

1. Yeung S, Socheat D, Moorthy VS et al. Artemisinin resistance on the Thai-Cambodian border. Lancet 2009; 374: 1418-9.

2. Hawkes M, Conroy AL, Kain KC. Spread of artemisinin resistance in malaria. The New England journal of medicine 2014; 371: 1944-5.

3. Burrows JN, van Huijsduijnen RH, Mohrle JJ et al. Designing the next generation of medicines for malaria control and eradication. Malaria journal 2013; 12: 187.

4. Okamoto M, Yoko-o T, Umemura M et al. Glycosylphosphatidylinositol-anchored proteins are required for the transport of detergent-resistant microdomain-associated membrane proteins Tat2p and Fur4p. The Journal of biological chemistry 2006; 281: 4013-23.

5. Sagane K, Umemura M, Ogawa-Mitsuhashi K et al. Analysis of membrane topology and identification of essential residues for the yeast endoplasmic reticulum inositol acyltransferase Gwt1p. The Journal of biological chemistry 2011; 286: 14649-58.

6. Tsukahara K, Hata K, Nakamoto K et al. Medicinal genetics approach towards identifying the molecular target of a novel inhibitor of fungal cell wall assembly. Mol Microbiol 2003; 48: 1029-42.

7. Umemura M, Okamoto M, Nakayama K et al. GWT1 gene is required for inositol acylation of glycosylphosphatidylinositol anchors in yeast. The Journal of biological chemistry 2003; 278: 23639-47.

8. Miyazaki M, Horii T, Hata K et al. In vitro activity of E1210, a novel antifungal, against clinically important yeasts and molds. Antimicrobial agents and chemotherapy 2011; 55: 4652-8.

9. Hata K, Horii T, Miyazaki M et al. Efficacy of oral E1210, a new broad-spectrum antifungal with a novel mechanism of action, in murine models of candidiasis, aspergillosis, and fusariosis. Antimicrobial agents and chemotherapy 2011; 55: 4543-51.

10. Watanabe NA, Miyazaki M, Horii T et al. E1210, a new broad-spectrum antifungal, suppresses Candida albicans hyphal growth through inhibition of glycosylphosphatidylinositol biosynthesis. Antimicrobial agents and chemotherapy 2012; 56: 960-71.