Investment

プロジェクト

テトラオキサン構造を有する速効性抗マラリア剤E209の化合物選択に向けた探索研究
Project Completed
 
  • 受領年
    2015
  • 投資金額
    ¥20,775,374
  • 病気
    Malaria
  • 対象
    Drug
  • 開発段階
    Lead Optimization
  • パートナー
    エーザイ株式会社, リバプール大学, リバプール大学熱帯医学校

イントロダクション/背景

マラリアはPlasmodium属原虫の寄生によって引き起こされる。中でも致死率の高い熱帯熱マラリアの治療においては、迅速な原虫駆除を示すアルテミシニンを含む合剤が第一選択である(1)。アルテミシニンは、中国のTu教授が、2015年のノーベル医学生理学賞を受賞されるきっかけとなった抗マラリア薬である。しかしながら、現在利用されている合剤にはいくつかの問題があり、最も深刻な問題はアルテミシニンに対する薬剤耐性が急速に拡大していることである(2)。したがって、アルテミシニンと共通の活性構造を持ちながら、既存薬の欠点を克服した次世代の薬剤を開発することが急務である。

 マラリア制圧はグローバルヘルスにおける大きな課題であり、Medicines for Malaria Venture(MMV)はこの課題に立ち向かうために、新薬が目指すべき治療薬としての全体的な特性(Target Product Profile、TPP)を設定した(3)。TPPでは、速効性の薬剤を合剤に入れ込み、単回投与でマラリアを治癒することを目指している。

 アルテミシニン類に生じた薬剤耐性の問題は深刻であり、他の速効性薬剤も開発段階にあるものの、アルテミシニンの有効性に関わる活性構造を持つ、化学合成可能な新たな化合物の開発は、耐性出現のリスクに対応し、薬効および化学構造の両面で薬剤の幅を広げることにつながるため、非常に有意義である。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

マラリアの制圧は、世界共通の目標である(9)。効果的なマラリアの制圧と制御には、効果の高い薬剤と、媒介蚊のコントロールを併用する必要がある。マラリアに対処するためには、既存の薬剤では不十分であり、新たな薬剤開発がMMVの設定するTPPに沿って進められている。現在のマラリア治療で最も脅威なのはアルテミシニン耐性の出現である。承認薬で随一の速効性を示すアルテミシニン系併用剤が耐性の発現により長期的には使えなくなることは、大きな懸念である(10)。E209はアルテミシニンの耐性機構には影響を受けず、現在のアルテミシニン類に置き換わることが可能となる。また、次世代の速効性薬剤であるオゾナイド系薬剤やATPase4阻害剤の代わりにもなりうる安全性および薬効プロファイルを示している。アルテミシニンが有する構造を持つ薬剤はすでにヒトで使用されてきたこと、また、全てのヒトマラリア原虫に効果を示すこと、さらにその開発成功可能性が低くないことを考えて、Liverpool School of Tropical Medicine、University of LiverpoolおよびエーザイはE209を次世代の速効性抗マラリア剤候補ととらえ、臨床試験に向けて開発を進めていく。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

マラリアは年間に50万人以上の人々を死に追いやる病気であり、世界が一体となって制圧を目指している。マラリア制圧に向けては、新薬を含めた幅広いツールを慎重に配備することが必要である。MMVではこの試みに必要となる薬剤を慎重に分析し、世界中の研究成果の足並みを揃えるために、目指すべき治療薬としての全体的な特性(TPP)とこれに伴う構成する配合剤の一成分として目指すべき化合物特性(TCP)を設定している。TCP 1では速効性の化合物を求めており、これはTPP 1で求められる併用治療薬に用いられる。アルテミシニン耐性が出現した場合でも、単回投与による治癒というコンセプトを満たすためには、マラリア原虫を確実に素早く減らす新薬が求められている。現在、このコンセプトを満たす可能性のある合成オゾナイドやATPase4阻害剤を含めた複数の化合物がすでに開発段階にはあるが、パイプラインと臨床での選択肢をさらに増やすため、これらと肩を並べる化合物の開発が求められている。E209はアルテミシニンに置き換わり、次世代のTCP 1薬剤としてオゾナイドやATPase4阻害剤と競合する薬になるものと期待している。

各パートナーの役割と責任

エーザイは、本プロジェクトに対して毒性学の専門知識を提供し、開発候補化合物の選択に関わる安全性試験についての助言を行います。また、製剤化研究の側面からリード候補化合物の塩型スクリーニングや他の製剤化検討データを提供すると共に、製剤化に関する助言を行います。その他、リード候補化合物の大量合成のための合成ルートも検討しています。

 

LSTMは、本プロジェクトに関して、パートナーとの全体的なコーディネイトを行います。LSTMは、これまでにも抗マラリア薬開発を目的としたアカデミアや民間企業と連携したプロジェクトを多数経験しており、本プログラムにおいてもコーディネーターとして、全てのパートナー、Medicines for Malaria Venture (MMV)、およびGHIT Fundと緊密に連携していきます。

 

リバプール大学は、エーザイと共同して、リード候補化合物のスケールアップ合成検討、塩型スクリーニングなどの製剤化検討、溶解性および安定性検討など数多くの創薬化学活動を行います。

他(参考文献、引用文献など)

1. P. M. O'Neill, G. H. Posner, J. Med. Chem. 2004, 47, 2945.

2. A. M. Dondorp, F. Nosten, N. J. White, New. Engl. J. Med. 2009, 361, 1808.

3. J.N. Burrows, R.H. van Huijsduijnen, J.J. Mohrle, C. Oeuvray et al., Malaria Journal, 2013, 12, 187.

4. Amewu, R.; Stachulski, A. V.; Ward, S. A.; Berry, N. G.; Bray, P. G.; Davies, J.; Labat, G.; Vivas, L.; O’Neill, P. M. Design and synthesis of orally active dispiro 1,2,4,5-tetraoxanes; synthetic antimalarials with superior activity to artemisinin. Organic & Biomolecular Chemistry, 2006, 4, 4431-4436

5. O’Neill, P. M.; Amewu, R. K.; Nixon, G. L.; ElGarah, F. B.; Mungthin, M.; Chadwick, J.; Shone, A. E.; Vivas, L.; Lander, H.; Barton, V.; Muangnoicharoen, S.; Bray, P. G.; Davies, J.; Park, B. K.; Wittlin, S.; Brun, R.; Preschel, M.; Zhang, K. S.; Ward, S. A. Identification of a 1,2,4,5-Tetraoxane Antimalarial Drug-Development Candidate (RKA 182) with Superior Properties to the Semisynthetic Artemisinins. Angewandte Chemie-International Edition, 2010, 49, 5693-5697

6. Marti, F.; Chadwick, J.; Amewu, R. K.; Burrell-Saward, H.; Srivastava, A.; Ward, S. A.; Sharma, R.; Berry, N.; O'Neill, P. M. Second generation analogues of RKA182: synthetic tetraoxanes with outstanding in vitro and in vivo antimalarial activities. Medchemcomm., 2011, 2, 661-665

7. Richard Amewu; O'Neill, Paul Michael; Stachulski, Andrew; Ellis, Gemma; Ward, Stephen Andrew Preparation of dispiro-tetraoxane compounds for the treatment of malaria and/or cancer. 2008, WO 2008038030 A2.

8. Amewu Richard; Marti Francecs; Ward Stephen Andrew; O'Neill Paul. Preparation of dispirocyclohexanyl tetraoxanylcycloalkylphenol derivatives and analogs for use as antimalarials. 2010, WO2010109172 (A1). 

9. http://www.mmv.org/research-development 

10. http://www.who.int/malaria/media/artemisinin_resistance_qa/en/