Investment

プロジェクト

新規抗結核薬のリード化合物探索研究
Project Completed
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  • 受領年
    2015
  • 投資金額
    ¥99,972,033
  • 病気
    Tuberculosis
  • 対象
    Drug
  • 開発段階
    Lead Identification
  • パートナー
    公益財団法人結核予防会結核研究所, The Global Alliance for TB Drug Development, 塩野義製薬株式会社
  • 過去の案件

イントロダクション/背景

塩野義製薬、結核研究所ならびにTBアライアンスはGHITファンドの助成のもと、新規抗結核薬探索のためのスクリーニングプログラムを実施した。塩野義製薬が保有するオリジナル低分子化合物ライブラリーより約4万化合物を評価した結果、3シリーズのヒット化合物を見出すに至った。特に代表化合物は好気条件下、嫌気条件下いずれにおいても良好な抗結核菌活性を示し、かつ、その抗菌活性はヒト細胞に対する細胞毒性の値と乖離を示した。この特徴は、生体内で休眠状態の結核菌集団に対しても活性を示すポテンシャルを期待させるものである。また、ヒット化合物は新規な構造を有しており、既存の結核薬に耐性を示す多剤耐性結核菌に対しても有効性を維持していた。我々は得られたヒット化合物について種々の構造修飾や展開を経て、優れた抗結核活性を有し、また、薬物動態プロファイルや安全性を示す新規リード化合物の創製を目指す。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

WHOによれば、世界中で2013年に900万人が結核を発症し、150万人が命を落としていると推計され、結核は開発途上国を中心に世界的な脅威となっている感染症である。中でも深刻な問題の一つは治療手段の乏しい多剤耐性結核の拡大であり、有効な治療薬が世界で望まれている。また、HIVと結核の同時感染も致死率が高く問題視されているが、その原因として挙げられるのは、抗HIV薬と結核治療薬との併用の難しさによる治療選択肢の少なさである。加えて、結核治療は薬剤感受性の結核に対する標準療法でも6ヶ月間の投薬治療を要し、薬剤耐性結核感染に対してはより長期間が必要となるため、服薬コンプライアンスの低下から耐性菌の更なる蔓延のリスクを孕んでいる。
我々のプロジェクトは、治療期間の短期化を実現できる薬効を有し、薬剤相互作用や安全性により優れる、既存薬耐性菌にも有効かつ安価な新規抗結核薬の創製を目的としており、上記諸問題の克服を目指している。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

我々のパートナーシップが既にスクリーニングプログラムで見出し、本プロジェクトで起点とするヒット化合物は、新規の化学構造を有しており、既存の耐性菌に対する有効性が期待され、実際に試験した中で超多剤耐性結核菌に対しても薬剤感受性結核菌に対する活性と同程度の良好な活性を示すことが明らかとなった。また、嫌気条件下においても良好な抗結核活性を発揮する特徴が既に見出されており、生体内で増殖速度が低下ないし休眠状態となっている結核菌集団に対しても薬効を示すことが期待できる。本活性は治療短期化の可能性も示唆するものである。一方、一部のヒット化合物については既に塩野義製薬社内プログラム(抗菌薬とは異なる領域)で評価が進められたものが含まれ、集積された化学や薬物動態、安全性等の研究知識を活用することで創薬プロセスを効率化・加速できる可能性がある。

最終報告書

1. プロジェクトの目的

塩野義製薬、結核研究所ならびにTBアライアンスはGHITファンドの助成のもと、新規抗結核薬探索スクリーニングを実施した結果、3シリーズのヒット化合物を見出した。我々は得られたヒット化合物について種々の構造修飾や展開を経て、優れた抗結核活性や薬物動態ならびに安全性を示す新規リード化合物の創製を目指した。

 

2. プロジェクト・デザイン

選択された3つのヒットシリーズに対し、抗結核活性と細胞障害性ならびに物理化学的性質、薬物代謝指標を検討する構造活性相関研究を実施し、シリーズの優先度を見極める。優先シリーズについて課題把握ならびに動物モデルにおける薬効検討を進め、GHITファンドで設定されているリード最適化段階へ進む条件を満たす。

 

3. プロジェクトの結果及び考察

選択された3つのヒットシリーズの初期検討の結果、プロジェクト開始から6ヶ月の段階で1つの優先すべきシリーズが見出された。本シリーズは非常に優れた抗結核菌活性に加え、良好な物理化学的性質、薬物代謝酵素安定性、げっ歯類における経口吸収性が確認された。この魅力的なプロファイルに基づき、その後の本プロジェクトはこのシリーズにフォーカスし進められた。プロジェクト開始から1年後までに、本シリーズのげっ歯類への連投時の安全性や、結核菌肺感染マウスモデルにおける肺内生存結核菌数の無治療群に比べての減少作用が確認され、GHITファンドの設定するリードの基準を満足した。その後も諸検討を実施し、高い脂溶性と低い溶解度の改善、特定のタイプの薬剤代謝酵素に対する不安定性の克服などの課題にも克服の方向性を見出すことができた。本シリーズは塩野義製薬社内プログラム(抗菌薬とは異なる領域)で評価が進められたものであり、その集積された化学や薬物動態、安全性等の研究知識が活用されたことで創薬プロセスは実際に効率化・加速できたと考えられる。

しかしながら、本シリーズは抗結核菌活性値の再現性の問題に直面した。シリーズ化合物の良好な活性は2つの異なる施設の評価で確認されていたが、これが複数の化合物に対し両施設で同様に再現性が得られなくなり、一方で、試験に供した化合物において有意な変化は見出されなかった。原因究明や代替評価条件の検討を行なったが解決に至らず、残念ながら本シリーズに対する取り組みは中止を判断した。今後、本プロジェクトでは優先度を下げたヒットシリーズについて展開を検討する。