Investment

プロジェクト

新規作用機序を持つ抗マラリア薬に向けたリード化合物の最適化
完了プロジェクト
 

イントロダクション/背景

蚊を介して毎年200万人がマラリアに感染し、2012年には5才以下の小児を中心に62万5千人がマラリアにより死亡している。この治療には、蚊による伝搬の制御やワクチン開発に加えて、薬剤耐性への対応、感染・伝搬状態への対応、肝臓での休眠期の三日熱マラリア・卵形マラリア原虫への対応など多様な試みが必要である。

 

ブロード研究所では明確な新規作用機序で肝臓期・伝搬期・血液期の熱帯熱マラリアに効果を示しうる化合物群を見出した。この化合物群はマウスマラリア実験系に対して素晴らしい治療効果を示している。我々はGHIT資金を得てエーザイと化合物の開発を進めることで、迅速な薬剤耐性マラリア排除や予防・感染拡大阻止に適した臨床候補化合物を得られると考えている。この提案は、現在の化合物を最適化してMMV(Medicines for Malaria Venture)が定めた目標を満たすものを見いだすことを目的としている。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

マラリア治療のための多様な対応として、MMVでは複数薬剤の単回投与による治療と予防(SERCaP: single exposure radical cure and prophylaxis)の開発を目標としている。ここではSERCaPの目指す薬剤像(TPP: target product profile)として、迅速に血液期のマラリアを除去すること、伝播を防止すること、肝臓での休眠期に作用することを挙げている。SERCaPでは最低2種の薬剤を含むことで耐性の出現を減少させようとしている。このパートナーシップでは、SERCaP薬剤に使用されるような化合物を見出すことを目標としている。このパートナーシップで目指す化合物は新規作用機序により薬剤耐性マラリアに対して有効であることに加えて、肝臓期・伝搬期・血液期という多様なマラリアの感染状態に対して有効であり、マラリア根絶のために極めて重要なものとなる。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

この提案で革新的な点は2つある。一点目は化合物の構造である。これは天然物構造の良い点を基にした多様性指向合成によって得た独自のものであると共に、必要に応じて容易に最適化可能なものである。二点目は作用機序である。我々の化合物はこれまで作用機序として他の研究では検討されてこなかったマラリアのタンパク合成阻害に作用して薬効を示すと考えられている。この新しい作用機序により、クロロキンなどの薬剤耐性マラリアに対しても抑制効果が期待できる。

各パートナーの役割と責任

エーザイの研究チームは、以下の分野において助言やサポートを提供します。

  • 化学:創薬化学戦略、合成ルート最適化、中間体および最終品のスケールアップ合成
  • 吸収・分布・代謝・排泄:周辺化合物の代謝的安定性、代謝物の構造決定、動物における体内動態評価、組織移行性
  • 安全性:げっ歯類および非げっ歯類における毒性を含む安全性評価、安全性薬理および遺伝毒性研究

 

ブロード研究所の多様性指向合成DOSライブラリーのスクリーニングより、肝臓および伝播ステージのみならず、血球ステージにある熱帯熱マラリア原虫に対しても強力な活性を示す新規の作用機序を持つユニークな化合物群がすでに見出されています。現在、ブロード研究所は、ライブラリーの構築に活用されてきたモジュール合成経路を基に、本ヒットシリーズのin vitro活性、物理化学的および薬物動態学的性質、そして安全性プロファイルの改善に向けた創薬化学の取り組みをリードしています。ブロード研究所で実施された先進的な研究には、種々のin vivo有効性証明研究のみならず、標的分子の同定や標的分子の検証も含まれます。