Investment

プロジェクト

マラリア撲滅に有用な新規マラリア伝搬阻止ワクチンの開発
Project Completed
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  • 受領年
    2014
  • 投資金額
    ¥76,609,856
  • 病気
    Malaria
  • 対象
    Vaccine
  • 開発段階
    Technology Platform Identification
  • パートナー
    愛媛大学, PATHマラリアワクチンイニシアティブ

イントロダクション/背景

マラリアは人類に深刻な影響を及ぼすグローバルな保健課題です。蚊で媒介されるこの寄生虫病は、発展途上国において死亡者数、患者数ともに上位を占め、毎年世界で数億人が罹り死者も70万人におよんでいます(1)。現在流行地でのマラリア対策としては、治療薬に加えて、蚊帳や殺虫剤による媒介蚊対策が行われていますが、治療薬耐性マラリアや殺虫剤耐性蚊が広がりその対策に難渋しています。そこで、マラリア対策の切り札としてワクチンが開発されていますが未だ実用化されていません。特に、マラリア伝搬阻止ワクチン(TBV)は、患者から蚊への原虫感染を止めマラリア流行のサイクルを断つことが出来るため、マラリア撲滅の切り札と考えられています。しかし、これまでTBVの候補タンパク質で第1相臨床試験に進んだものは2個にすぎず、全てヒトに対する免疫原性が低いという課題に直面していました。したがって、新しいTBV候補抗原の探索が急務となっています。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

マラリアワクチン開発の現在の課題は、新規ワクチン候補の迅速な探索です。PATHマラリアワクチンイニシアティブはマラリアワクチン臨床開発の経験が豊富です。また、愛媛大学は、独自に開発したコムギ無細胞タンパク質合成法(WGCFS)を用いたマラリアタンパク質合成および新規マラリアワクチン候補の探索とマラリア伝搬阻止ワクチン基礎研究の経験が豊富です。そこで、この二者のパートナーシップによる本プロジェクトは、愛媛大学が世界に先駆けて見出した新規TBV候補Pf75の合成とその前臨床研究を実施するに最適な組合せです。このプロジェクトによって、Pf75を抗原とする新規TBVが開発されれば、これまでワクチン候補がわずかしか無く難渋していたTBVの開発を加速し、現在開発中のその他のマラリアワクチンと組み合わせることにより、流行地におけるマラリア撲滅対策の推進に貢献できます。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

愛媛大学では、WGCFSを用いることにより合成が難しいマラリアタンパク質を容易に高品質で合成できます。したがって、新規TBV候補抗原であるPf75タンパク質の作製にWGCFSを用いることで成功の可能性が高まると考えられます。さらに、このPf75を用いて作製した抗体も高品質となるため、Pf75のワクチン効果の測定のみならずその後のPf75臨床開発の際のワクチンの品質管理にも活用できます。また、Pf75抗体の伝搬阻止活性の測定には熱帯熱マラリア原虫と媒介蚊を使うため、その実験には厳格なバイオセーフティーの環境が求められますが、PATHマラリアワクチンイニシアティブでは既に伝搬阻止活性の測定プラットフォームを保有しています。さらに多数のマラリアワクチン臨床試験の実績もあるため、臨床試験に向けた開発パイプラインも整っています。したがって、本プロジェクトは、Pf75新規マラリア伝搬阻止ワクチン開発を迅速に実施可能なパートナーシップとして革新的なものです。

他(参考文献、引用文献など)

参考文献;

WHO’s World Malaria Report 2013

Malaria Vaccine Technology Roadmap

最終報告書

1. プロジェクトの目的

マラリアは、最重要地球規模保健課題の一つです。しかし、マラリアワクチン(VIMT)は未だ実用化されていません。特に、VIMTの中でもヒトから蚊への感染を直接防ぐ伝搬阻止ワクチン開発はマラリア撲滅に必須と考えられていますが、現在までに第1相臨床試験が実施されたワクチン候補は蚊ステージ原虫表面タンパク質Pfs25だけで、これ以外のワクチン候補抗原はわずか数個にすぎません。

 

そこで本プロジェクトは、Pf75が新規熱帯熱マラリア伝搬阻止ワクチン候補となりうるか検証することを目的に実施しました。

 

2. プロジェクトのデザイン

最近、マラリア伝搬阻止ワクチンの基礎研究に20年以上の経験を持つ愛媛大学におけるネズミマラリア原虫モデルの研究において、Py75タンパク質に対する抗体がネズミマラリア原虫の蚊への感染を完全に阻止しました。さらに、ゲノムデーターベース解析から、Py75と同等の遺伝子が熱帯熱マラリア原虫にもPf75として存在することが判り、Pf75が新規の伝搬阻止ワクチン抗原となる可能性が示されました。愛媛大学が高品質なマラリアタンパク質を合成出来るコムギ胚芽無細胞タンパク質合成法(WGCFS)を用いてPf75を合成し、Pf75抗体の蚊への伝搬阻止活性の測定(SMFA)をマラリアワクチン開発の世界的リーダーであるPATHマラリアワクチンイニシアティブ(MVI)が担当しました。

 

3. プロジェクトの結果及び考察

第一段階は、Pf75組換えタンパク質を12種類デザインし、すべての組換えタンパク質をWGCFSにより各1mg合成することに成功しました。第二段階は、それらをマウスとウサギに免疫して得られたポリクローナル抗体を用いて、マラリア原虫の蚊への感染型である生殖母体/生殖体への抗体の結合を確認しました。つまり、Pf75は熱帯熱マラリア原虫にタンパク質として発現していることが実証されました。次に、これらの抗体の熱帯熱マラリア原虫伝搬阻止活性を測定しました。しかし、いずれの抗体も第三段階の目標である80%以上の伝搬阻止活性には到達しませんでした。以上の結果から、Pf75抗原による伝搬阻止活性の向上のためには、抗原デザインならびに抗体価上昇ための更なる研究が必要と考えられます。そこで、愛媛大学とMVIは、GHIT Fundの助成金を有効に活用して頂くため、この段階で一旦本プロジェクトを中断し、未使用助成金をGHIT Fundに返還させて頂くことを決めました。しかし、本プロジェクトチームはこの新規熱帯熱マラリア伝搬阻止ワクチン候補Pf75の基礎研究を継続し、成果が得られれば将来のGHIT Fundの助成金申請も視野に入れております。