Investment

プロジェクト

シャーガス病のワクチン開発を進めるためのアジュバント(免疫補強)技術
Project Completed
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  • 受領年
    2014
  • 投資金額
    ¥200,000,000
  • 病気
    NTD (Chagas disease)
  • 対象
    Vaccine
  • 開発段階
    Preclinical Development
  • パートナー
    エーザイ株式会社, ベイラー医科大学, Aeras, セービン ワクチン研究所

イントロダクション/背景

このプロジェクトはシャーガス病治療に向けて新しいアジュバントワクチンの開発を目指すものである。

 

シャーガス病は顧みられない熱帯病(NTD)で、T.Cruziという原虫が貧しい人々を中心に感染して起こっている。これまで感染は主に南北アメリカ大陸に限定されていたが、最近では国境を超えた移動が頻繁になったことからアメリカ合衆国やヨーロッパ・オーストラリア・日本にまで感染が拡大している。

 

シャーガス病は毎年1万人が死亡し、7500-9000万人にその感染リスクがある疾患である。慢性感染者の30%では死を引き起こす心臓への悪影響があり、10%では大腸や食道の消化機能が障害を受けている。子供で症状が重く、母子感染の問題が重要となっている。従来のシャーガス病治療薬は急性期に限定的な効果が見られたのみであり、母子感染防止のため妊娠期に安全に投与することができない。また実用化されたワクチンは無い。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

セービンワクチン研究所の製品開発パートナーシップは私企業・学術研究機関・公的機関が協力してNTDなどの感染症に対して安価に安全で効果的なワクチン開発を行うことに注力している。

 

このパートナーシップでは、シャーガス病ワクチン開発に向けた最初の道筋を創ることを目指している。シャーガス病は最も重要なNTDの一つであり、ワクチン開発が成功すれば、現在の治療期間を短縮することや治療費の削減に役立つことに加え、数百万人いる感染者の生活を大きく改善できる。さらにワクチンでは毒性が少なく、母子感染防止のための妊婦への適用も期待できる。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

このプロジェクトが革新的である点は、シャーガス病の原因となっている原虫(T.Cruzi)の抗原を用いたワクチン開発と新しいアジュバント系とを組み合わせている点である。

アルミニウムを利用したアジュバント(免疫反応補強剤)は強い抗体反応が得られるが、シャーガス病治療で十分なCD8陽性のT細胞免疫反応を起こすことができない。そのためシャーガス病の治療には、新しい試みが必要である。このプロジェクトではT.Cruziのタンパク抗原(Tc24)と免疫反応を強化するTLR4(Toll様受容体4)に作用しアジュバント作用を示す薬剤(E6020)とを混合し従来の手法より強く、シャーガス病感染防止に十分な免疫反応を起こす新たなワクチンを開発することを目指している。このE6020を利用したアジュバントによるワクチン開発の手法が成功すれば、シャーガス病以外の多数のワクチン開発にも応用することが期待できる。

各パートナーの役割と責任

エーザイは、シャーガス病ワクチン投与候補者用アジュバントとしての検査を行なうために、E6020の水性懸濁液と水中油型乳剤の開発を行ないます。これは、E6020アジュバントの免疫増強高価に最適化すべく調整されます。エーザイは、E6020を様々な種類の製剤開発へと活用してきた経験を持ち、E6020の安全性、安定性、特性を証明したデータが膨大に存在しています。E6020はまた、以前GMPのもとでも製造されました。

 

Sabinには、提携パートナーのフォーマンスを監督する責任があります。この責任とは、技術面でのアシスタンス、品質の確保、書類による証明、財務面での状況把握、プロジェクト管理と多岐に渡ります。Sabinが、プロジェクトのテクニカルデータを精査、製品開発方針に沿って進度を確認、今後の方向性を提案致します。規則に基づいた指針の調整、cGMPパイロットファシリティーへのテクノロジー移管に必要となる書類の準備、臨床試験用医薬品向けの安定性プログラム、GLP毒物学プロトコルの開発、アメリカFDA(または、他の革新的国家での同等の規則)向けのINDの開発、準備、書類作成をお任せ下さい。

 

ベイラー医科大学は以下を担当します: (a) 選択されたシャーガス病用組換たんぱく質抗原ワクチンのスケールアッププロセス最適化、開発、特性化 (b) シャーガス病たんぱく質抗原とエーザイのE6020アジュバントの開発 (c) E6020アジュバントのワクチン開発の、マウスによる生体実験を使用した(抗原性と効用)評価 (d) マウスでクルーズトリパノソーマのモデルに対抗し、慢性のシャーガス病による心臓肥大を軽減する高価を測定。

 

Aerasは、シャーガス病ワクチン投与候補者向けに、品質設計、プロセス分析テクノロジーといった指針を活用し、テクニカルサポートを提供します。さらに、必要となる書類を準備、1つの研究室で完結する規模でのSabin PDPプロセスをAerasにてデモンストレーションすることでベイラー医科大学の技術移管、GMPではない20リットルの製造もサポートします。多くのシャーガス病ワクチン投与候補や、その他の関連エンジニアリングがこのプロジェクトに参画中です。

他(参考文献、引用文献など)

参考文献;

[1] "Chagas Disease." Uniting to Combat NTDs. Uniting to Combat NTDs, n.d. Web. 09 July 2014

2 Hotez PJ., et al., The global burden of disease study 2010: interpretation and implications for the neglected tropical diseases. PLoS Negl Trop Dis, 2014. 8(7):e2865.

3 Global Chagas disease Coalition (2013) Declaration of the Global Chagas Disease Coalition.   PLOS Speaking of Medicine 

4 Hotez PJ (2014) Chagas disease: urgent measures are needed. Huffington Post http://www.huffingtonpost.com/peter-hotez-md-phd/chagas-disease_b_4675010.html

5 "Chagas Disease." Uniting to Combat NTDs. Uniting to Combat NTDs, n.d. Web. 09 July 2014

6 DNDi, unpublished data

7 Apt, W., Current and developing therapeutic agents in the treatment of Chagas disease. Drug Des Devel Ther, 2010. 4: p. 243-53.

8 Buckner, F.S. and N. Navabi, Advances in Chagas disease drug development: 2009-2010. Curr Opin Infect Dis, 2010. 23(6): p. 609-16.

9 Lee, B.Y., et al., The Potential Economic Value of a Trypanosoma cruzi (Chagas Disease) Vaccine in Latin America. PLoS Negl Trop Dis, 2010. 4(12): p. e916.

10 Lescure, F.X., et al., Chagas disease: changes in knowledge and management. Lancet Infect Dis, 2010. 10(8): p. 556-70.

11 Murray CJ, Vos T, Lozano R, Naghavi M, Flaxman AD, Michaud C, et al. Lancet. 2012;380(9859):2197-223.

12 Peter Hotez M.D. "America's 'New' Diseases of Poverty." The Huffington Post. TheHuffingtonPost.com, 08 Jan. 2014. Web. 08 Apr. 2014.

13 Lee BY, Bacon KM, Wateska AR, Bottazzi ME, Dumonteil E, Hotez PJ. Human vaccines & immunotherapeutics. 2012;8(9):1293-301.

14 Dumonteil E, et al. Accelerating the development of a therapeutic vaccine for human Chagas disease: rationale and prospects. Expert Rev Vaccines. 2012 Sep;11(9):1043-55.

15 Rodrigues MM, de Alencar BC, Claser C, Tzelepis F, Silveira EL, Haolla FA, et al. Memorias do Instituto Oswaldo Cruz. 2009;104 Suppl 1:281-7.

最終報告書

1. プロジェクトの目的

慢性的シャーガス心筋症の臨床的続発症を革新的な治療法により予防する必要性が高まりを見せています。本プロジェクトの目的は、シャーガス心筋症の進行を止める新たな策として、アジュバントを用いたかたちでの、シャーガス病向け治療ワクチン開発、検査の前臨床調査を実行することにあります。

 

2. プロジェクト・デザイン

本プロジェクトは、比類なきテクノロジーとして、ワクチンに関連したベンズニダゾール化学療法を採用したかたちでの、スケーラブルなTc24-C4、E6020を用いた寄生虫ワクチン候補、免疫増強薬の製造、定式化、検査の再現可能なプロセス開発の実施により構成されます。 Tc24-C4/E6020を用いた治療ワクチンの効果は、マウスにおける急性および慢性の感染により査定されました。

 

3. プロジェクトの結果及び考察

Sabin PDPは組み換え型Tc24-C4、寄生虫ワクチン候補の実現可能な製造、公式化、検査手法の開発に成功しました。これにはスケール10 LのTc24-C4についての実現可能かつ安定性の高い製造方法最適化、および、遺伝子組み換えでない20 Lでの試験実施が含まれます。ここから得られたデータからは内部参照基準と比較の可能なタンパク質の生成と純度が確認されます。アジュバントE6020ワクチンの水中油型乳剤としての準備工程は最適化され、Tc24-C4およびE6020製造は再現が可能です。加えて、E6020乳剤の定量化のための中スループット分析手法も開発されました。

 

マウスは臨床前にクルーズトリパノソーマH1寄生虫に感染、次に、急性の検査として7日後および14日後にワクチンを投与、そして、慢性の検査として70日後、98日後にこれを実施しました。慢性的そして、急性的に感染したマウスにおいて、Tc24-C4/E6020ワクチンの効果によりTH1型細胞性免疫の誘導、マウスの生存率向上、心筋線維症、心臓における寄生の減少が観察されました。心臓における寄生は大幅に削減され、治療後にマウスの60%において寄生虫血症が見られ、さらに、病気が確定されていない段階でのワクチン投与が抗体による免疫反応を生み、これが、 心筋線維症減少に帰結しています。ベンズニダゾールとTc24-C4/E6020の組み合わせについては、ベンズニダゾールの少量の投与を受けた場合であるか、これが関与しないかたちであるかに関わらず、抗原の免疫反応はワクチン投与を受けたマウスにおいて顕著となりました。

 

次の段階として、Sabin PDPは、現行のGMPに即したかたちでTc24-C4/E6020の研究を続行、GLP毒物学研究を実施します。人体への応用可能性を検討すべく、Sabin PDPは自然に感染した慢性的非人類霊長類の抗原性研究を実施、人間の病気に類似した動物モデルにおける結果を査定します。