Investment

プロジェクト

抗ボルバキア菌を標的とした新規フィラリア成虫駆虫薬創出に向けたリード化合物群の最適化
Project Completed
 
  • 受領年
    2013
  • 投資金額
    ¥109,316,675
  • 病気
    NTD (Lymphatic filariasis / Onchocerciasis)
  • 対象
    Drug
  • 開発段階
    Lead Optimization
  • パートナー
    エーザイ株式会社, University of Liverpool, リバプール大学熱帯医学校

イントロダクション/背景

寄生虫によって起こる感染であるリンパ系フィラリア症(象皮症)とオンコセルカ症(河川盲目症)は、世界の1億5千万人以上の人々を苦しめています。正しい手法を駆使すればこれらの疾患を制圧することが可能であること、また、そうすべきと国際社会が同意して以来、その目標を達成するための集団投薬が今日も継続的に行われています。しかし、その原因であるフィラリア成虫を駆除する治療剤がいまだ存在しないため、現在実施されている各プログラムでは、これらの疾患により健康を害されている、人口の多い農村地方のコミュニティに対して年に1回(もしくはそれ以上)、複数年をかけて投薬をする必要があります。我々は、フィラリア成虫の細胞内に寄生するボルバキアという細菌を駆除することで、成虫を死滅させることができることを解明しました。

 

本プロジェクトは、この成虫体内に寄生するボルバキア菌を効率的に駆除する、新薬を見出すことを目指しています。このアプローチは、制圧プログラムの実施期間を大幅に短縮すること、既存の治療薬に新たな選択肢を提供すること、そして現行の制圧法で失敗している、または適用不可な地域において使用可能な手法として提供できることの、3つの可能性を有しています。ドキシサイクリンという抗生物質にこのような作用が既に確認されており、ヒトでの臨床試験によって既にPOC(Proof of Concept:創薬概念の検証)が証明されています。その臨床試験の結果は良好でありましたが、投与方法として4〜6週間、毎日の投薬が必要であり、また、集団投与の対象者の大部分を占める小児・妊婦には投薬できないという問題があります。

 

このプロジェクトの目標は、ドキシサイクリンより迅速かつ効果的に作用を示し、集団投薬が必要な対象者全員に投与可能な新薬候補を見出すことであり、複数の薬剤候補を選定し、前臨床安全性試験の段階に進めることです。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

リバプール大学熱帯医学校(Liverpool School of Tropical Medicine(LSTM)は、熱帯病のコントロール・治療のための新しいツールや技術を開発し、実施することを使命とする非営利公益研究機関です。LSTMは、ビル&メリンダ·ゲイツ財団が資金を提供する抗ボルバキア菌の研究プログラムを有しており、化合物の抗ボルバキア活性を大規模に評価するための実験系を開発してきました。

 

リバプール大学(UOL)化学科は、複数の抗寄生虫薬について、その作用機序解明に大きな貢献をしてきました。UOLとLSTMは、20年を超える提携の中で「分子からヒトまで」という戦略を掲げ、ヒトでの臨床試験を含めた薬の開発過程の全ての段階で研究プロジェクトを運営してきました。その内の3つのプロジェクトが、抗マラリア薬を数多く開発してきた組織であるMedicines for Malaria Venture(MMV)の開発プロジェクトとして貢献しています。

 

エーザイは、日本の製薬会社として、政府、国際機関、その他の非営利民間組織とのパートナーシップを通じて、医薬品アクセスの向上のために、世界規模で積極的に活動しています。エーザイは、過去最大の国際官民パートナーシップである「ロンドン宣言」にも参加し、2020年まで10種の顧みられない熱帯病を制圧する目標に向けて共闘しています。エーザイは、新興国や発展途上国での事業拡大に伴い、これらの国々での健康福祉の向上に貢献することが、その国の経済発展や中間所得者層の拡大につながり、自社の将来成長への長期的な投資になると考えています。

 

LSTM、UOLとエーザイのこのユニークなパートナーシップでは、世界的に認知された高いレベルの専門知識を結集させることで、世界各国の何百万人もの人々の生活に影響を与えている二大寄生虫症の現在の問題に対処するための新しいアプローチにつながることを期待しています。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

広大な化合物ライブラリーから、ボルバキア菌を死滅させる作用の有無について様々な化合物が調べられてきました。その中で、良好な活性を有する複数の化合物が見出されています。今後、それらの化合物は、抗ボルバキア菌作用を有する薬物としての妥当な特性や効果を発揮するよう最適化されます。そのためには、ヒトの疾患での効果予測性が実証されている種々の評価のための実験モデルが必須です。また、化合物の化学修飾および最適化を通じて、我々は、抗菌活性と、安全で効果的な薬とするために不可欠なその他の要因との間の良好なバランスを有するリード候補化合物を選定します。

 

医薬品化学、計算化学、活性評価の実験系、さらに薬理学的な評価をするための技術等、専門知識を組み合わせることが、新しい独創的な化合物の開発につながると考えられます。

 

寄生虫の生命維持に不可欠な細胞内細菌を標的とすることで病原寄生虫を死滅させるアプローチは、寄生虫の薬物治療における新規のアプローチであり、成虫を直接に標的とする治療に比べて多くの利点があると考えられます。POCを実証するための臨床試験では、このアプローチが有効であること、フィラリア制圧のための期間を大幅に短縮する可能性を示唆しています。

各パートナーの役割と責任

エーザイの役割は、エーザイが有する高い創薬技術および体内動態(DMPK)研究基盤を活用し、シード化合物から有望な類縁体を合成・提供することです。これら新規合成化合物は今後、化合物の最適化および開発候補化合物の選択を目指し、リバプール大学熱帯医学校 (LSTM) において抗ボルバキア活性が、エーザイにおいてDMPKプロファイルが評価されます。

 

LSTMは、本プロジェクトのコーディネイトおよび化合物の抗ボルバキア活性を評価するための試験を行います。活性評価は、まずin vitroハイスループット細胞アッセイを行い、良好な活性が認められた化合物については、抗ボルバキア効果が抗フィラリア活性に繋がっていることを示すため、in vitro抗フィラリア活性を試験します。さらに、優れた抗ボルバキア活性と望ましいDMPKプロファイルを持った化合物については、フィラリアの二つの異なるライフステージ、幼虫および成虫、のin vivoモデルを用いて薬理活性を評価します。この成虫モデルは、ヒトのリンパ系フィラリア症に非常に似た症状を示します。

 

リバプール大学は、アドバイザーとして、LSTMおよびエーザイへ、合成化学および創薬化学に関する助言をします。