Investment

プロジェクト

シャーガス病の新しい治療薬
Project Completed
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  • 受領年
    2013
  • 投資金額
    ¥384,089,264
  • 病気
    NTD (Chagas disease)
  • 対象
    Drug
  • 開発段階
    Clinical Phase2
  • パートナー
    エーザイ株式会社, Drugs for Neglected Diseases initiative

イントロダクション/背景

シャーガス病は世界各地、特に中南米およびカリブ海の貧しい地方で公衆衛生上の問題となっている感染症です。約800万人が感染しているとみられ、治療を受けられない場合はそのおよそ3分の1が深刻な心臓または腸管の障害に発展し死に至ります。現在使用されている2種類の治療薬は数十年前に発見されたもので、この病気の慢性期の治療効果には差があり、また成人における耐容性が不十分であることが知られています。このような背景から、同様のもしくはより高い効果があり、さらによりよい忍容性を持つ慢性期の治療、特に成人向けに効果のある新薬が開発されれば大きな打開策となります。

 シャーガス病の新しい治療戦略を提供するために、DNDiとエーザイは共同で、エルゴステロール生合成阻害作用を持つ新世代トリアゾール系化合物であるE1224と、基準治療薬であるベンズニダゾールの標準量および減量した投与量での併用についてフェーズII プルーフオブコンセプトを実施することにしました。将来の承認に備え必要となる、化学試験、製造試験、品質管理、非臨床的試験すべて実施されます。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

シャーガス病は世界で最も顧みられない病気のひとつです。新しい治療方法が必要であることには世界の見解が一致しています。シャーガス病は世界保健機構 (WHO) により、いわゆる3型疾病と呼ばれる「治療薬や診断法の不足している (tool-deficient)」顧みられない熱帯病と認められています。

DNDiとエーザイは共同で、人々のニーズに応えるため、経口剤で、使い易く、安全、かつ買い求めやすい値段の新しく効果の高いシャーガス病の治療薬開発に取り組んでいます。シャーガス病の治療アクセスは強調されるべき問題です。今日、シャーガス病に苦しむ人達の中で治療を受けているのはほんの一握りです。このたびの共同開発計画では治療薬が将来最大限提供され使用されるよう、当初よりアクセス問題を検討しています。 

フェーズ3試験が完了した時点で、疾病負荷の高い国々を当面優先的に、同時に厳しい規制当局を持つ国々も含め新規治療薬の承認を広く得ていくことを計画しています。さらに、WHO必須医薬品リストへの収載に向け早期に申請提出することも目標にしています。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

このプロジェクトの目標は、経口剤で使い易く、安全、かつ買い求めやすい値段の新しく効果の高いシャーガス病の革新的治療薬の開発です。

エーザイが開発したE1224はラブコナゾール(RAV)のホスホノオキシメチルエーテルの水溶性モノリシン塩で、哺乳類の体内で急速にラブコナゾールに転化します。現在ほとんどの国々で使われているシャーガス病の第一選択薬はベンズニダゾールです。現在の薬剤投与量と投与間隔は、数十年も昔の臨床研究から得られたもので、直接的な比較対象は非常に限られたものです。推奨される治療は国によって非常に幅があり、現在の治療法を比較し立証を基にした薬剤投与計画の情報はごくわずかです。

E1224の3種類の投与法とベンズニダゾールをプラセボ対照で比較した、ランダム化盲験比較試験のフェーズ2が最近完了しました。そのデータを基に、本プロジェクトでは慢性不確定期のシャーガス病成人患者の治療に対するE1224とベンズニダゾールを使った様々な薬剤投与計画を評価します。

併用療法は癌、心血管疾患、感染症を含むさまざまな疾病の治療法としてよく知られています。結核、マラリア、ハンセン病、HIV などの感染症は異なった作用機序の薬剤を併用することにより、始めて効果的な治療や対策がなされるようになりました。

各パートナーの役割と責任

エーザイ株式会社は製品および原材料のCMC(化学・製造・管理)を担当し、臨床研究のための医薬品を供給します。研究責任者は共同研究開発パートナーとして、ヒトでのマスバランス試験など特定の臨床および非臨床試験の主導や実施を担うとともに、科学的な専門性を発揮して臨床開発を支援します。

DNDiは研究責任者としてラブコナゾールのプロドラッグであるE1224の臨床開発の責任を担い、シャーガス病の流行国で患者に対する臨床試験を行います。特にDNDiは研究開発パートナーと共に薬物相互作用試験を実施するとともに、参加する患者を募った上で第2相のPOC(概念実証)臨床試験を開始します。DNDiはエーザイ株式会社およびシャーガス病臨床研究プラットフォーム(2009年に設立され、臨床研究の能力強化と有望な新規治療法の評価に取り組んでいる、流行国におけるシャーガス病の臨床医や研究者のネットワーク)と協力して臨床試験を推進します。

最終報告書

1.プロジェクトの目的

シャーガス病はラテンアメリカの21カ国で流行する顧みられない熱帯病です。患者は米国やヨーロッパ、日本、オーストラリアでも見られます。第一選択薬であるベンズニダゾールは効果が認められていますが、副作用や投与期間の長さが治療の障壁となっています。

本プロジェクトではシャーガス病の新たな治療指針の確立を目指し、慢性不確定期の成人患者を対象に、ベンズニダゾールとエーザイが創製したE1224の併用およびベンズニダゾール単剤の標準および減量投与を評価する第2相POC試験を実施しました。

 

2.プロジェクト・デザイン

ボリビアの3サイトでプラセボ対象二重盲検ランダム化第2相試験を実施しました。投与期間・投与量が異なるベンズニダゾール単剤もしくはE1224との併用の6種類をプラセボ対照で比較し、有効性と安全性を検証しました。

薬事承認で必要となる化学、製造、管理と非臨床試験も実施しました。

- 原薬・製剤の安定性試験およびプロセスバリデーション

- 薬物代謝・薬物動態の非臨床試験

- 毒性試験

 

3.プロジェクトの結果及び考察

スクリーニングをした518人の成人患者のうち、慢性不確定期である210人を6種類いずれかの治療群もしくはプラセボ群に割り付けました。患者の試験参加期間は約22カ月間(リクルートメント:10カ月、スクリーニング:最大40日、治療:8週、フォローアップ:治療開始後、12カ月までを含む)で、202人の患者が試験を完了しました。PCR検査により血液中の寄生虫のDNAを確かめることで有効性を検証し、治療開始後、12カ月にわたり血中に寄生虫の兆候がない患者を治療が成功したものと判断しました。

本試験により、慢性不確定期である患者では、ベンズニダゾールが投与期間や投与量、もしくはE1224との併用に関わらず、抗寄生虫反応を効果的に誘導し、忍容性が良好であることが示されました。安全性も良好であり、副作用による治療中断率は想定内で、標準治療による他の試験とも整合性が見られました。

結論として、標準治療(1日300mgを8週間投与、1日5mg/kgを60日間投与に相当する固定用量)よりも顕著に期間の短いベンズニダゾールの治療法(1日300mgを2週間投与)が、特に推奨されます。これまで障壁であった投与期間が短縮されることにより、治療アクセスの改善が期待されます。医療提供者と患者の共通の懸念もなくなり、今後は治療の選択が促進されるでしょう。また各国の対策プログラムで必要な治療コストも軽減されます。DNDiは現在、Pan-American Health Organization/WHO、各国の対策プログラム、保健省やその他のパートナーと共に、治療指針の変更とこの新たな適応の承認登録に取り組んでいます。

 

最後に、本プロジェクトに多大なるインカインドと努力を提供し、シャーガス病の治療の改善に大きな貢献をもたらしたエーザイに感謝の辞を述べます。