Investment

プロジェクト

ハンセン病ワクチンLepVaxの当事者参加型臨床研究
  • 受領年
    2023
  • 投資金額
    ¥150,379,601
  • 病気
    NTD (Leishmaniasis)
  • 対象
    Vaccine
  • 開発段階
    Phase1 Clinical Development
  • パートナー
    笹川保健財団 ,  オズワルドクルス研究所 ,  アメリカハンセン病協会

イントロダクション/背景

イントロダクション

ハンセン病は、らい菌(Mycobacterium leprae)による感染症で、抹消神経系が侵されます。この疾患の感染と発病は、患者の自然免疫反応と適応免疫反応、遺伝的背景、環境要因に左右され、貧しく社会から疎外された人々に非常に大きな影響を与えています。

世界の新規診断患者数は、1985年の520万人から2021年には14万594人(コロナ流行時の活動制限のために、この数字は実際より低い可能性が高いです)に減少していますが、その74.5%を占めるインド、ブラジル、インドネシアなどのハンセン病流行地では、依然として公衆衛生上の重要な問題となっています(1)。多剤併用療法(MDT)が新規患者数の減少に大きく貢献しています。しかし、この化学療法の有効性をもっても、らい反応や障害、時折起こる再燃が見受けられます。ハンセン病は世界的には稀な疾患で、国の保健対策では優先順位が低くみなされますが、2021年の新規診断患者数(128,405人)のうち、8,492人はgrade 2の障害をもち、9,052人は15歳未満の子どもが占めています。そのため、ハンセン病の制圧は世界保健機構(WHO)の主要な焦点であり続け(2)、感染の拡がりが主な障壁となっています。

 

プロジェクトの目的

LepVaxの臨床研究は、感染を遮断して、ハンセン病を制圧する使命を推進しています。このプロジェクトは、極めて重要なハンセン病流行地域であるブラジルでのフェーズ1及び2の安全性試験で、サブユニットワクチンであるLepVaxの健常者とハンセン病患者に対する安全性と免疫原性を実証することを目的としています。この臨床試験の先駆的な要素は、ハンセン病回復者の参画です。私たちはブラジルのハンセン病回復者団体MORHAN(Movement to Reintegrate Persons Affected by Hansen's Disease)のメンバーと緊密に連携して、ハンセン病当事者の視点や洞察を調査に反映することによって、ブラジルにおける質の高いハンセン病サービスの実現と介入の理解を目指しています。私たちは協力することで、ハンセン病に関する認識を高め、臨床の機会を増やし、ハンセン病の制圧を導いてゆくことができます。この臨床試験は、Lap Vaxの治療的及び予防的適応という更なる発展のための決定的なステージゲートとしての役割を果たします。

 

プロジェクト・デザイン

アメリカハンセン病協会は15年以上前にAccess to Advanced Health Institute (AAHI)と提携し、世界初のハンセン病に特化したワクチンLapVaxを開発しました。それは、LEP-F1抗原 とGLA-SEアジュバントから構成されています。LEP-F1抗原は、ハンセン病患者のT細胞を介した免疫反応を誘導するために選択された4つのM.leprae抗原から成る遺伝子組換え融合タンパク質です。

マウス、アルマジロ、ウサギを用いた非臨床試験で、LepVaxの安全性と免疫原性が実証されました(3)。2019年には、米国の健康な成人に対しても、安全性と良好な忍容性が確認されました。

フェーズ 1b及び2a臨床試験は、無作為化二重盲検プラセボ対照臨床試験で、成人の健常者と成人のハンセン病患者に対するLEP-F1 + GLA-SE 試験の安全性と忍容性、免疫原性を評価します。フェーズ1b臨床試験では、低用量のLEP-F1抗原(2μg)または高用量のLep-F1抗原(10μg)とGLA-SEアジュバント(5μg)を併用し、生理食塩水のプラセボと比較評価します。 各群18名の被験者を予定しています。 LEP-F1の投与量選択は少菌型(PB)と多菌型(MB)のハンセン病患者を対象に試験することが提案されています。フェーズ1b臨床試験の評価指標は、それぞれの研究投与の局所及び全身性反応と有害事象を自発的に報告した参加者の数です。LEP-F1 IgG抗体とサイトカイン分泌に基づく特異的T細胞反応は、副次評価項目として評価されます。バイオマーカー免疫調節は探索的評価項目です。フェーズ2a臨床試験の評価指標には、不活性病変、菌量、らい反応の頻度と強さ、ワクチンの潜在的な反応原性事象に関する神経機能の測定も含まれます。

笹川保健財団は、スキルや実体験をもつハンセン病回復者が研究プロセスに参画することを主導します。彼らは、研究の倫理的信頼性と実用的な効率性を確保し、関連情報や研究結果を関係コミュニティや関係者に広める際に、決定的な役割を果たします。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

ワクチンの必要性は世界的に認識されています。WHOの2030年世界ハンセン病戦略では、LapVaxについて戦略の柱2に次のように引用されています。「LepVaxを含む、他の既存のワクチンや潜在性のある新しいワクチンの臨床試験により、この戦略の期間中にハンセン病予防のための重要な新しいツールがもたらされるかもしれない。」LepVaxの有効性が証明されれば、2040年までに80万人以上のハンセン病による障害が回避され、それは20万人以上の障害調整生存年(DALY)に相当します。

さらに、Leprosy Research InitiativeとGlobal Partnership for Zero Leprosyは、予防と治療の双方の介入の必要性を次のように強調し、LepVaxはこれらに対応しています。

- 化学的予防レジメンとワクチンを含む予防的アプローチの向上

- らい反応や神経機能障害に対する最適化された新たな治療オプション

同様に、WHOは2011年に「ハンセン病サービスにおける回復者の参加強化のためのガイドライン」を発表し、質の高いサービスを実現するために、医療提供者中心のアプローチから人間中心のアプローチへと移行することが必須の側面として、回復者参加の重要性を強調しています(4)。

それゆえに、最新のWHO世界ハンセン病戦略2021-2030「Toward Zero Leprosy」においても、4つの全ての戦略の柱の特定の活動において、回復者の参画が強く推奨されています。特に「研究」は、ガイドラインの中で、ハンセン病サービスの実施の側面において、当事者参加を強化すべき分野の一つとして挙げられています。しかし、これまで研究分野における当事者の参加は、ハンセン病だけでなく他のNTDsにおいても、ほとんど実践されていません。このプロジェクトは先進的な取り組みであり、回復者による公平な参加のモデルとなり得るものです。 

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

LepVaxはT細胞指向性サブユニットワクチンです。また、治療的適応で評価された最初のハンセン病ワクチン候補であり、最初のハンセン病サブユニットワクチンであり、ハンセン病患者の免疫関連神経障害を軽減することで評価される最初の免疫療法であるという点で、これまでに試験されたワクチンと異なります。同様に、ワクチン臨床試験におけるハンセン病患者コミュニティの参画は、ブラジルでは新しい試みです。 

臨床試験へのハンセン病回復者の参画は、回復者が情報を受けるだけでなく、研究の中で役割を果たし、そして、自身の生活に影響を与える対策をもたらすことを確保します。その結果、すべての人の健康と幸福に対する権利を確保する上での、平等や公正、公平さの規範を生み出すという人権に対するインパクトをもたらします。

各パートナーの役割と責任

アメリカハンセン病協会(American Leprosy Missions: ALM)は過去20年にわたりハンセン病ワクチンのビジョンをリードしてきた臨床試験の監督で、フェーズ1b及び2aの試験を監督します。ALMの責務には、ワクチン開発の取り組みへの助言、指導、指示を行うグローバルな共同事業体であるLepVaxワクチン諮問委員会の編成が含まれます。

 

ブラジルのリオデジャネイロに在るオズワルドクルス研究所(Oswaldo Cruz Institute : IOC)、Fiocruzは、臨床試験の実施者で、試験の管理、被験者の募集と検査、報告、公表を担います。臨床試験の会場は、オズワルドクルス研究所の敷地内にあるハンセン病研究所Souza Araújo Outpatient Clinic(ASA)です。

 

笹川保健財団(Sasakawa Health Foundation: SHF)はハンセン病流行地域のハンセン病回復者団体の長年の支援者であり、パートナーで、本事業とブラジルのハンセン病回復者団体・個人との連携を担います。また、SHFは関連する科学的専門知識を提供します。

他(参考文献、引用文献など)

(1) WHO, Weekly Epidemiological Record. Global leprosy (Hansen disease) update, 2021: moving towards interruption of transmission, (2022).

(2) WHO, Towards zero leprosy. Global leprosy (Hansen’s Disease) strategy 2021– 2030. World Health Organization. License: CC BY-NC-SA 3.0 IGO, (2021).

(3) Duthie MS, Pena MT, Ebenezer GJ, Gillis TP, Sharma R, Cunningham K, Polydefkis M, Maeda Y, Makino M, Truman RW, and Reed SG. LepVax, a defined subunit vaccine that provides effective pre-exposure and post-exposure prophylaxis of M. leprae infection. npj Vaccines (2018) 3:12; doi:10.1038/s41541-018-0050-z

(4) WHO, Guidelines for strengthening participation of persons affected by leprosy in leprosy services, World Health Organization, 2011, License: CC BY-NC-SA 3.0 IGO.