Investment

プロジェクト

抗成虫作用を有するオンコセルカ症の治療薬としてのDNDI-6166(CC1076166)前臨床開発
  • 受領年
    2022
  • 投資金額
    ¥30,000,000
  • 病気
    NTD(Onchocerciasis)
  • 対象
    Drug
  • 開発段階
    Preclinical development
  • パートナー
    ボン大学病院 ,  ボゾリサーチ - ITR ,  マヒドン・オックスフォード熱帯医学研究ユニット ,  Drugs for Neglected Diseases initiative

イントロダクション/背景

イントロダクション

オンコセルカ症(別名河川盲目症)は、流れの速い川に繁殖するブヨに繰り返し刺されることで感染します。このブヨが媒介する寄生虫は、激しい痒みや醜い皮膚病変を引き起こし、繰り返し感染すると、失明することがあります。

オンコセルカ症は、多くのアフリカ諸国で失明の主な原因となっており、中南米でも流行しています。世界の疾病負荷研究によると、2017年に世界で2,090万人の感染者がいると推定され、そのうち1,460万人が皮膚疾患、115万人が視力低下を患っています。2017年には最大で134万DALY(障害調整生存年)が失われ、蔓延国における大きな公衆衛生上の問題となっています。

現在の対策は、感染リスクを抱える人口全体にイベルメクチンを集団投与(MDA)する予防的化学療法です。しかし、イベルメクチンはフィラリア仔虫を殺すものの、人体内で10年以上生き続ける成虫は殺さないため、このプログラムは10-12年間繰り返す必要があります。

 

プロジェクトの目的

本プロジェクトの目的は、安全で効果的、かつ入手可能な価格で、現場に適した抗成虫作用を有する、または長期殺傷効果を持つオンコセルカ症の治療薬を開発することです。DNDiとパートナーはプロジェクト期間内にDNDI-6166の前臨床開発を完了し、健常人を対象とした第I相試験に進むことを目指しています。

 

プロジェクト・デザイン

本プロジェクトでは、DNDI-6166の前臨床データパッケージを完成させることで、ヒト初回投与(FIH)試験の開始を支援します。具体的には、以下の4つのワークパッケージを実施します。

ワークパッケージ1 化学・製造・管理(CMC):スケールアップ合成に適した原薬製造プロセスを開発し、FIH用製剤を開発・製造する

ワークパッケージ2 前臨床安全性評価:GLP(Good Laboratory Practice)試験により、DNDI-6166の安全性プロファイルを確立する

ワークパッケージ3 作用機序(MoA):DNDI-6166の作用機序を明らかにする

ワークパッケージ4 ヒトにおける安全域および有効量を見定める薬物動態/薬力学(PK/PD)を確認する

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

MDAは20年以上実施されていますが、多くの国では、オンコセルカ症を公衆衛生上の問題として制御できているとは言えません。患者治療のためには、抗成虫作用を有する薬剤が必要です。またMDAは、検査と治療のセットによるアプローチがより費用対効果が高くなる転換点を迎えようとしています。

2020年、世界保健機関(WHO)は、オンコセルカ症の抗成虫剤の必要性を含む、顧みられない熱帯病(NTDs)の制御、制圧、根絶に向けた2030年までの目標を更新しました。このロードマップでは、伝播遮断を加速するための抗成虫剤開発と、皮膚NTDsの統合的アプローチを求めています。数少ない現行の治療法の欠点を考えると、非常に切実な状況です。研究開発における中止率の高さを考慮すると、新規作用機序を持つ新規化合物をパイプラインに加えることは極めて重要です。オンコセルカ症の疾病負荷を軽減し、蔓延国の人間開発指数(HDI)を向上させ、またロードマップで設定された目標を達成するために、より有効で安全かつ安価な治療薬が不可欠です。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

新規抗成虫剤は、オンコセルカ症の制圧を加速させ、患者の治療選択肢を増やします。患者のQOLや健康を改善し、罹患率やDALYsを減少させ、患者や地域全体に大きな利益をもたらすことが期待されます。特にDNDI-6166による治療では、フィラリア仔虫が誘発する皮膚炎や視力低下の発生を防ぐことができ、さらにフィラリア仔虫を殺傷しないため、オンコセルカ症およびロア糸状虫症の重複感染者に見られる特異的な副作用を防ぐことができ、ロア糸状虫蔓延地域でも投与できることが期待できます。DNDI-6166は成虫を駆除するため、オンコセルカ症、マンソネラ症、ロア糸状虫症の伝播を防ぐことも期待されます。また、非感染性疾患であるオンコセルカ症に関連したてんかんやうなずき症候群にも役立つ可能性があります。両疾患の病因は解明されていませんが、オンコセルカ症の発生と重なるため、オンコセルカ症の治療と制圧に成功すれば、これらの命に関わる疾患も予防できる可能性があります。

各パートナーの役割と責任

プロジェクト全体はDNDiが管理します。

ボゾリサーチ - ITRは、前臨床試験(薬理試験、毒性試験、毒物動態試験および前臨床薬物動態試験、生殖発生毒性試験、遺伝毒性試験)を担当します。

DNDiは、スケールアップ合成に適した化学プロセスの開発、第I相試験のための製剤開発、およびGMP(Good Manufacturing Practice)に基づく臨床用検体の製造を担う医薬品製造受託機関を選定し、製剤の調達を行います。

マヒドン・オックスフォード熱帯医学研究ユニットは、前臨床薬理学データを用いてPK/PDを確立し、予測されるヒトへの有効な投与量・投与方法を調整し、動物での毒性作用の原因となる薬物動態学上の要因を同定します。

ボン大学病院(UKB)は、薬剤が寄生虫に対して薬理効果を発揮する際に生ずる、特定の生化学反応に焦点をあて、作用機序を研究します。

他(参考文献、引用文献など)

 

Caption

“Mama Cecile” in front of her house in Babagulu. Her full name is Cecile Olonga and she was at the Salambongo village health clinic to see doctors who came to her village to screen for river blindness. She arrived to the health clinic accompanied by a neighbor wearing a donated T-shirt that said “Live Fast.” She is blind from river blindness. Mama Cecile is 67 years old and lives alone – her husband is dead. She lives in a small community walking distance away from the health clinic in Salambongo and lives next to her daughters, who help with her care. “One day I went to tend to the fields,” she says. “I was walking behind one of my children and then I started to see poorly – I almost fell into a hole.” One of her children died soon after but afterwards she started to see poorly. Cecile said her child was killed by sorcery. Her legs started to swell and her vision got fuzzier and fuzzier. This was in 2016 – her child died in 2015. I thought it was God doing this to me,” she says, tearing up. There were tons of blackflies in her fields “You couldn’t go out with short sleeves.” She only remembers taking ivermectin one time, in 2003. She remembers having serious side effects [according to health workers back then MDA of ivermectin was 6mg, now it is 3mg a dose] “I didn’t want to take it afterwards,” she says. Mama Celie’s son-in-law and daughter help her a lot. “I am completely dependent,” she says. Even though this care is a huge burden, her children do not want to take ivecmetin. “I’m not interested,” says the son-in-law.

 

Diseases:Filarial Disease
Region:Africa
Region - African countries Democratic Republic of the Congo (DRC)
Copyright:Ley Uwera-DNDi

最終報告書

1.プロジェクトの目的

本プロジェクトの目的は、ラットおよびイヌでの探索的毒性試験をGLP非適用下で実施し、非晶質固体分散体製剤であるDNDI-6166の治療濃度域を評価することです。これら試験の結果により非晶質固体分散体製剤に注力した前臨床開発の継続可否を判断し、また安全性プロファイルや治療域を詳細に評価することで、今後の主要な試験に不可欠な洞察を得ることができます。

 

2.プロジェクト・デザイン

イヌでの用量設定試験:1群2頭(雄1頭、雌1頭)で7、25、75 mg/kg/日のいずれかを7日間連続で投与
ラットでの用量設定試験:1群6匹(雄3匹、雌3匹)で7、25、50 mg/kg/日のいずれかを14日間連続で投与
両試験とも毒物動態学的評価と包括的な病理学的検査により、DNDI-6166の薬物動態プロファイルと臓器・組織への影響を評価しました。

 

3.プロジェクトの結果及び考察(800 字以内)

DNDI-6166非晶質固体分散体製剤の開発に成功し、その物理的および化学的特性を包括的に評価しました。その後、イヌおよびラットにおける薬物動態試験を実施し、用量設定試験に進みました。

イヌの試験では、わずかな唾液分泌過剰や嘔吐などの臨床症候が雌雄ともに観察されました。血小板数も雌雄ともに変化し、脂肪組織での細胞浸潤は75 mg/kg/日の群で認められましたが、有害性はないと判断されました。無毒性量(NOAEL)は75 mg/kg/日で設定され、AUC0-24hおよびCmaxの平均値は、雄で221,000[h-ng/ml]および25,300[ng/ml]、雌で204,000[h-ng/ml]および23,100[ng/ml]でした。

ラットの試験では、高用量群で死亡が観察されたため投与を中断しました。中用量群では、骨髄、胸腺、脾臓、腎臓、肝臓、副腎に軽度の副作用もしくは副作用の発生は見られませんでした。脂肪組織での単核細胞の浸潤に基づき、無毒性量(NOAEL)は雄で25 mg/kg/日、雌で7 mg/kg/日で設定されました。AUC0-24hおよびCmaxの平均値は、雄で104,000[h-ng/ml]および14,000[ng/ml]、雌で65,200[h-ng/ml]および10,400[ng/ml]でした。

非晶質固体分散体製剤は、イヌおよびラットの治療指数(TI)で期待される改善を示し、in vitroでのO. volvulus活性に基づくTI値はイヌで19.0、ラットで4.0でした。

(1)曝露量と重篤度の相関性、(2)関連性のない曝露量がイヌおよびラットで特定されていること、(3)十分な安全域があることを考慮すると、主要なGLP毒性試験を実施し、DNDI-6166の更なるプロファイリングを進めることをDNDiおよびパートナーは支持します。これにより、現在観察されている有害な特質を解明し、その可逆性を検証し、健常人を対象とした開発を安全に進めるための適切なバイオマーカーを同定する機会が得られます。