Investment

プロジェクト

新規マラリア治療薬創出を目指したHit-to-Lead研究
  • 受領年
    2022
  • 投資金額
    ¥132,318,400
  • 病気
    Malaria
  • 対象
    Drug
  • 開発段階
    Lead Identification
  • パートナー
    長崎大学 ,  Medicines for Malaria Venture (MMV) ,  塩野義製薬株式会社

イントロダクション/背景

イントロダクション

マラリアはマラリア原虫により引き起こされる感染症であり、2021年には全世界で2億4700万人が罹患し61.9万人が死亡したとされています。現在、アルテミシニン誘導体を使用したartemisinin-based combination therapy (ACT)が治療の第一選択ですが、アルテミシニン耐性を含む薬剤耐性マラリア原虫の拡大が問題になっており、薬剤耐性マラリア原虫に有効で高い安全性を示す新規治療薬が望まれています。塩野義製薬と長崎大学は、2019年からマラリアを中心とした感染症分野における共同研究を進めています。その中で構築されたフェノタイプスクリーニング評価手法によって塩野義製薬の約8万の化合物ライブラリーの評価を行い、さらにMMVの協力を得て新規の化学構造を有する5つのヒット化合物群を特定しました。本プロジェクトでは、これらの化合物群から薬剤耐性マラリア原虫の問題解決に繋がりうる新たなリード化合物を創出したいと考えています。

プロジェクトの目的

本Hit-to-Leadプロジェクトではフェノタイプスクリーニングによって得られた5つのヒット化合物群について構造活性相関研究を実施し、既知の薬剤耐性マラリア原虫に対する有効性が期待でき、MMVのearly lead criteriaを満たすリード化合物創出を目的とします。 

プロジェクト・デザイン

本プロジェクトでは最初の6か月間で5つのヒット化合物群の構造活性相関研究を実施し、既知の薬剤耐性マラリア原虫への有効性、薬剤として望まれる薬理活性・安全性・薬物動態といった側面から展開性を確認します。残りの18か月で展開性の高い化合物群にフォーカスして、さらなる薬理活性の向上と化合物の特徴付けを行い、マウスを用いたin vivo試験で有効性を確認します。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

マラリアで亡くなる患者の多くは5歳未満の幼い子どもです。本プロジェクトではこうした幼い子どもや妊婦など、ハイリスクの患者が服用できる安全性を確保しつつ、薬剤耐性マラリア原虫に有効な新規の治療薬の創出を目指します。このような薬剤を患者に届けることにより、マラリアが引き起こす命と健康の問題を軽減し、マラリアの制圧や排除に貢献していきます。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

本プロジェクトで進めるヒット化合物群は、抗マラリア薬として新しい化学構造を有しており、薬剤耐性マラリアへの有効性を実現していく上で重要な新規作用機序を有する可能性を秘めています。またこれら化合物は、治療薬にとって重要な即効性が確認できています。さらに、本プロジェクトでは長崎大学で構築されたオリジナルな薬理活性評価により構造活性相関研究を推進し、薬剤耐性マラリア原虫に有効な新規リード化合物の創出を目指します。これらのことにより、薬剤耐性マラリア原虫に有効な抗マラリア薬の創出が期待されます。

各パートナーの役割と責任

塩野義製薬は豊富な低分子創薬の経験を活かし、化合物デザインと化学合成、および薬物動態と安全性評価を実施し、構造活性相関研究をリードします。長崎大学は、マラリア治療薬創製に必要な薬理評価を実施し、化合物の薬理作用の特徴付けや作用機序解明に向けた研究を行います。MMVは豊富な抗マラリア創薬研究経験に基づくプロジェクトのサポート、および目標達成に必要な薬理評価を提供します。

他(参考文献、引用文献など)

1. WHO fact sheets (2022年12月08日)

https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/malaria

2. 塩野義製薬株式会社プレスリリース (2019年2月28日)

https://www.shionogi.com/content/dam/shionogi/jp/news/pdf/2019/190228_012.pdf

3. MMV Frontrunner template: early leads

https://www.mmv.org/research-development/information-scientists