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受領年2021
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投資金額¥83,373,809病気Tuberculosis対象Diagnostic開発段階Product Developmentパートナー株式会社アコースティックイノベーションズ , アントワープ熱帯医学研究所 , 健康増進研究センター(CHPR) , 公益財団法人結核予防会
イントロダクション/背景
1. イントロダクション
結核疑い患者の喀痰の質と量を改善することは、肺結核の診断感度を高める。しかし、全ての結核疑い患者が良質な喀痰を喀出できるわけではない。ラングフルートは低周波を発生するリードを含むフルート状のデバイスであり、呼気終末圧を上げ、音波の共鳴によって気道内壁に固着している喀痰を排出しやすくする。これは呼気によって駆動する軽量で手持ち可能なデバイスであり、2002年に米国で発明されたものである。阪下らは高張食塩水吸入とラングフルートを比較し、喀痰誘発能が同等であることを示し、副作用も少ないことを報告している。また、ラングフルートの使用により、塗抹陽性が25%増加することも報告されている。さらに独自に喀痰を排出できない高齢成人の88%で喀疾に有効であることや、小児での検体採取での有用性も示されている。
我々はラングフルート及びその廉価版であるラングフルートエコの実践的有用性を証明するため、本研究を実施する。
2. プロジェクトの目的
一次目標は、標準的な喀痰採取法(自発痰)とラングフルートエコ(プロトタイプ)あるいはオリジナルラングフルートを用いた喀痰採取法を比較することである。評価の基準としてXpert MTB Ultraを使用し、陽性率を比較する。
二次的な目的は、1)ラングフルートエコ及びオリジナルラングフルートを用いることで喀痰を喀出可能となる結核疑い患者の割合を評価すること、2)ラングフルートエコ、オリジナルラングフルート及び自発痰で喀痰の質と量を比較評価すること(Miller & Jones分類)、3)自発痰と比較した場合のラングフルートによる介入の可能性、安全性及び費用対効果を評価すること、の3点とする。
3. プロジェクト・デザイン
三つの比較要素(自発痰、ラングフルートエコ、オリジナルラングフルート)について音響的分析、運用評価及び費用対効果の評価を実施する。研究サイトとして核酸増幅法検査(Xpert MTB Ultra及びTB-LAMP)を実施可能な14のサイトを設定し、各々最低1,000名の結核疑い患者を試験する。バイアスを回避するため、無作為化トリプルクロスオーバーデザインを使用する。対象者として、喀痰喀出が困難であり結核菌量が少ない可能性が高いグループ(胸部X線陽性者、60歳以上、HIV感染者、22〜59歳の女性、入院患者、5〜14歳の子供)を含める。
主要評価項目は、結核菌陽性者の割合が自発痰よりも10%上回ることであり、さらに塗抹1+あるいはXpert MTB UltraでLow判定以上の割合が増加することである。ラングフルート使用上の正確さをモニターし、喀痰の提出の実現可能性、品質、量、ユーザー満足度及び収量を評価する。
本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?
喀痰の質と量を確保することはあらゆる結核菌検査の精度向上を図る上で最も重要かつ喫緊の課題である。多くの積極的結核発見プログラム(結核検診)で、胸部X線検査上異常があっても細菌学的診断のための適正な喀痰が得られないという問題が発生している。近年排痰誘導で結核スクリーニング効率が倍になるという報告や、適正な喀痰検査が核酸増幅法検査と同等の死亡率減少を示すという報告がある。
ラングフルートはこれまで適正な喀痰が提出できなかった結核疑い患者からの検査数を10〜40%増加させ、さらに10%の結核菌検出感度上昇さえることが期待される。これは多くの既存の検査のスケールアップにつながり、細菌学的診断が増加することで臨床的にも確実な治療を実施可能なケースが増加し、結果として治療成功と薬剤耐性の減少が期待できる。
本プロジェクトが革新的である点は何ですか?
ラングフルートの効果は喀痰の質および量の改善であるので、結核の細菌学的検査の何か一つが改善されるのではなく、全ての検査精度の向上に寄与しうる点が革新の核心である。既にWHOが認証している塗抹検査や核酸増幅法検査、培養検査など全てが高感度化する。結核菌の菌情報が得られることにより、推定的治療ではなくエビデンスに基づいた治療が可能となり、治療成功の増加が期待される。
さらに喀痰は深部肺の病理的情報を多く含む検体であり、結核感染以外にも一般の細菌感染症診断や悪性腫瘍の診断にも貢献する可能性が高い。
各パートナーの役割と責任
結核研究所(RIT)は、指定開発パートナーとして世界的な検査基準に従って喀痰の質および収量を評価するためのタイムライン、ベンチマーク、測定基準および方法を管理する。結核研究所は、ラボの能力開発と品質保証をサポートする。
アントワープ熱帯医学研究所(ITM)は、試験を世界的な結核の戦略的ニーズとベストプラクティスに合わせて研究を管理し、統計的評価をリードし、費用対効果分析を実施する。
カメルーンの結核レファレンス検査室バメンダ(TRLB)としても知られる健康増進研究センター(CHPR)は、結核診断の専門施設である。 CHPRは、既存のデジタルラボネットワークプラットフォームを使用してデータを収集し、フィールドでラングフルートの性能評価を実施する。
アコースティックイノベーションズ(AI)は、音響工学、製品開発、音響評価、設計最適化、製造、ライセンス供与、マーケティング、パッケージングおよびラングフルート出荷管理を実施する。
他(参考文献、引用文献など)
参考文献
1. Doumit M, Jaffé A. Use of the lung flute for sputum induction in children with cystic fibrosis: A pilot study. Pediatr Pulmonol [Internet]. 2015;50(4):340–3.
2. von Braun A, Sekaggya C, Henning L, Nakijoba R, Kambugu A, Fehr J, et al. ‘If at first you don’t succeed, try again’. Looking beyond the initial results of a failed tuberculosis diagnosis. Public Heal Action. 2015;5(3):170–2.
3. Sakashita K, Fujita A, Takamori M, Nagai T, Matsumoto T, Saito T, et al. Efficiency of the Lung Flute for sputum induction in patients with presumed pulmonary tuberculosis. Clin Respir J. 2018;12(4):1503–9.
4. Su J, Anjuman N, Guarnera MA, Zhang H, Stass SA. Analysis of Lung Flute – collected Sputum for Lung Cancer Diagnosis. Biomark Insights. 2015;10:55–61.
最終報告書
1.プロジェクトの目的
本研究では、結核検査のための喀痰検体の喀出を可能にするため、シンプルで安価な紙製のラングフルート(ラングフルートECO)を評価することを目的とする。カメルーンの結核疑い患者を対象に、細菌学的診断寄与、安全性、受容性、費用対効果について、標準的な排痰指導とラングフルートECOを比較評価する。
2.プロジェクト・デザイン
標準的排痰誘導とラングフルートECOを用いて、音響分析評価と費用対効果を含めた運用評価を実施する。研究期間中に14施設でそれぞれおよそ 1,000 人の結核疑い患者を対象に比較試験を行う。バイアスを軽減するために、無作為化クロスオーバーデザインを採用する。
3.プロジェクトの結果及び考察
ラングフルートECOの製品開発と分析評価は計画どおり完了した。合計 12,820 個のラングフルートECO をカメルーンに送付した。
フェーズ1では、ラングフルートECOの使用により研究参加者が1mLを超える喀痰を喀出できるか評価した。同時に安全性や実践性も評価している。フェーズ2では、ラングフルートECOの使用により結核診断の割合が増加するかを評価した。
フェーズ1では、1,271人がランダムに割り当てられ、1,172人が両方の介入を完了し、1,097人からデータが得られた。ラングフルートECOの使用後の参加者では、ビデオ指導のみの場合と比較して、1 mLを超える喀痰量が得られた参加者が多かった(117/1,097 (10.7%) vs 46/1,097 (4.2%), OR2.6, 95%CI 1.9–3.7, p<0.001))。ラングフルートECOの使用後の有害事象と症状の悪化は軽度であった(新たな事象はグレード1であり、全ての症状悪化事象はグレード1から2への増加による)。すべての有害事象は30分以内に自然寛解した。参加者は、ラングフルートECOの使用に概ね満足していた。
フェーズ2では9,250人の参加者が登録した。軽症者を多く登録するために、胸部X線スクリーニングによるエントリーを2023年9月15日まで継続した。全体として991人(約10%)が結核と診断された。4,670人の参加者の中間分析では、481人(10.3%)がXpert MTB/RIF Ultraアッセイで結核菌陽性であり、ラングフルートECOの使用後の参加者で結核が検出された割合は、ビデオ指導のみの場合よりも高かった(82/4,670 (1.8%) vs 54/4,670 (1.2%))。フェーズ2の完全なデータセットの分析が進行中であり、2023年第4四半期に完了する予定である。
ラングフルートECO の使用は忍容性が高く、結核診断検査に必要な量の喀痰を採取するのに有用であった。 今回の結果は、さまざまな大規模集団における喀痰の収集と結核の検出を支援するラングフルートECOのさらなる性能調査の基礎となるものである。
Investment
プロジェクト
ラングフルートエコによる検査弱者からの結核菌検査用喀痰収集の実践性と評価(3Vトライアル)