Investment

プロジェクト

重症マラリア治療薬としての新規PfATP4阻害剤SJ733の前臨床および臨床開発
  • 受領年
    2019
  • 投資金額
    ¥559,009,168
  • 病気
    Malaria
  • 対象
    Drug
  • 開発段階
    Preclinical development
  • パートナー
    エーザイ株式会社 ,  ケンタッキー大学

イントロダクション/背景

イントロダクション

重症マラリアは、迅速な非経口または経腸治療による緊急医療処置を必要とします。重症マラリアは年間200万人に及び、現在その治療にWHOが推奨するアーテスネート静注薬が34の開発途上国で用いられています。一方で、アーテスネート静注薬は米国、ヨーロッパ、オーストラリア、日本、その他多くの国々で承認されていません。また、他の重症マラリア治療薬には重大な課題(有効性/忍容性)があります。SJ733は第2相試験に入る経口3日間投与の非重症マラリア治療薬です。ヒトにおいてSJ733はマラリア原虫の血球および生殖ステージに対して活性を示し、優れた安全性プロファイルを有します。また、SJ733は第1b相試験において速やかな殺マラリア原虫作用を実証しました。そして、動物モデルでの胚・胎児発生毒性(EFD)は認められていません。SJ733の臨床プロファイルはSJ733が重症マラリア治療の有力候補であることを示しています。

 

プロジェクトの目的

プロジェクトの目的は次のとおりです。

1) 前臨床および臨床研究を行うのに十分な薬剤を提供するために、SJ733のGMP原薬を製造する。

2)  新薬治験申請(IND)申請用にイヌのブリッジングGLP毒性試験を実施し、SJ733を静脈内投与する際の治療域を明確にする。

3) 急速静注および点滴静注のためのSJ733の製剤研究および医薬品製造を行う。

4) SJ733静注薬のヒト初回投与試験を開始するためのINDを提出する。

5) SJ733静注薬の第1a相試験により急速静注と点滴静注の安全性と忍容性を確立する。

 

プロジェクト・デザイン

SJ733を重症マラリアの新規治療法として開発する。至適用量となるリード製剤処方を選択するために製剤研究を実施します。前臨床研究でイヌは毒性に対して最も感受性を示しました。したがって、ルートとスケジュールの提案を行うために、既存のINDとブリッジングするイヌGLP毒性試験を実施します。臨床研究は、2つのスケジュールの安全性、忍容性、および薬物動態の精査に焦点を当てます。急速静注はアーテスネート静注薬を、点滴静注は最も類似するキニーネ静注薬のスケジュールを対照とします。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

現在、重症マラリアの治療に選ばれるアーテスネート静注薬は34カ国でのみ利用可能です。従来薬のアーテスネート静注薬は、潜在的な耐性化の課題や忍容性と安全性の課題を考慮すると、適用範囲は限定的であり、重症者向けの新しい治療薬の開発が求められています。これは罹患率が高いアフリカ諸国にとって重要ですが、先進国では罹患率は低くとも重症化しやすいため、同様に強いニーズがあります。したがって、グローバルヘルスにおける重症者向け治療薬開発は、先進国の旅行者の重症例などの希少疾患治療薬としての薬剤開発の必要性と合致します。これは、米国の迅速承認制度を活用して世界的なニーズを満たす機会になります。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

SJ733は通常のマラリア治療のために開発されている新しい抗マラリア薬です。SJ733は、迅速な薬力学、優れた忍容性、優れた薬効、および前臨床モデルにおける優れた有効性を実証しており、ヒトにおける優れた忍容性、安全性、有効性を有しています。SJ733は重度のマラリアにも有用であることが証明される可能性があり、この提案はその潜在的な有用性を探るためのものです。

各パートナーの役割と責任

ケンタッキー大学は、プロジェクト全体の管理、試験の完遂、発生した問題の解決に関する責任を負います。 また、規制当局への申請書の提出と報告や出版物の調整についても責任を負います。

エーザイは、試験対象の原薬と医薬品の製造を監督する責任を負います。また、新製剤の研究開発を行います。

最終報告書

1.プロジェクトの目的

重症マラリア患者は年間200万人に及び、非経口もしくは経腸治療での緊急医療処置を必要とします。SJ733は非重症マラリアに対する第2相試験で有効性と認容性を示し、本研究では、重症マラリア治療薬として注射剤での第1a相試験に向けた開発を行いました。検討の結果,注射剤の開発が難しくなったため坐剤による開発に方針転換しました。

 

2.プロジェクト・デザイン

当初の注射剤の開発デザインは以下のとおりです。1) SJ733原薬のGMP製造、2) 製剤研究と製造、3) GLP犬毒性試験、4) 治験薬IND申請、5) 第1a相試験

検討の結果、注射剤の開発が困難と判断したため、3)-5) を3a) 坐剤の製剤研究と製造、4a) 坐剤のGLP犬毒性試験の実施に変更しました。

 

3.プロジェクトの結果及び考察

初期の検討として、SJ733の静脈内投与製剤の開発を行いました。様々な研究により、良好な溶解性を示す製剤がいくつか得られたものの、急速静注(ボーラス投与)に適した濃度での安定した液体製剤は得られませんでした。そのため、注射剤の開発を断念し、代替として坐剤の開発に変更しました。坐剤の初期検討では、複数の坐剤タイプを用いて吸収性と安定性の向上を目的とした実現可能性試験を実施し、動物での薬物動態試験も行いました。さらに、製造可能性を調査するための実験も実施されました。これらの実現可能性試験の結果に基づき、今後は臨床試験用製剤の開発に向けて坐剤の開発に注力し、必要に応じてそのための資金調達を行う予定です。