Investment

プロジェクト

皮膚リーシュマニア症に対する新規ワクチン候補の前臨床試験及び早期臨床試験の準備
Project Completed
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  • 受領年
    2016
  • 投資金額
    ¥409,666,429
  • 病気
    NTD (Leishmaniasis)
  • 対象
    Vaccine
  • 開発段階
    Preclinical Development
  • パートナー
    長崎大学, ロンドン大学衛生熱帯医学大学院, モロゲン, シャリテ, 欧州ワクチン・イニシアティブ

イントロダクション/背景

イントロダクション

リーシュマニア症は、自然治癒又は慢性の皮膚型(CL)、潰瘍を伴う粘膜皮膚型、死に至る内臓型(VL)など幅広い臨床像を呈する昆虫媒介性の原虫感染症である。サシチョウバエに媒介され、リーシュマニア属原虫が哺乳動物体内に侵入してマクロファージ内で増殖する。治療薬は高価で副作用が強く、耐性原虫も増えている。予防法は、蚊帳や殺虫剤などのベクターコントロールで効果は限定的で、環境汚染の問題もある。

リーシュマニア症の予防・治療にワクチン開発が期待されてきたが、実用化には至っていない。私達は、原虫のT細胞抗原を含む最適化5価DNAワクチンを開発した。抗原はCLとVL患者のT細胞を活性化し、マウスモデルのVLに対するワクチンの有効性を確認している。

本共同研究では、この細胞性免疫を誘導するワクチン候補(LEISHDNAVAX)の皮膚リーシュマニア症に対する前臨床試験及び第1相臨床試験の準備を行う。

 

プロジェクトの目的

DNAワクチン候補LEISHDNAVAXは、試験管内でヒトリーシュマニア症における抗原性を、マウスモデルで内臓リーシュマニア症に対する有効性を確認されている。本研究の目的は、皮膚リーシュマニア症に対するマウスモデルの前臨床試験を完了し、第I相臨床試験の準備を行うことである。本研究終了時には、ワクチンの安全性と免疫原性を調べるための第I相臨床試験開始に必要な条件を満たす。

 

プロジェクト・デザイン

当プロジェクトでは、皮膚リーシュマニア症(CL)に対するDNAワクチンLEISHDNAVAXの免疫原性及び予防的、治療的効果をマウスモデルで評価する前臨床試験を行う。また、第I相臨床試験の準備を行う。具体的には、4つの研究目標を設定する。 

①ワクチン予防効果の前臨床評価のため、マウスにワクチン免疫後感染実験を行い、感染前後の免疫応答及び感染予防効果を明らかにする。世界各地で流行する数種類のリーシュマニア原虫を用い、様々な免疫条件を検討する。

②以前実施した内臓リーシュマニア症マウスモデルの結果に基づき、単独または治療薬との組み合わせにより、皮膚リーシュマニア症に対するワクチンの治療効果を明らかにする。

③ワクチンの医薬品製造受託機関における製造工程を確立し、第I相臨床試験に必要なワクチンを生産する。

④ボランティアを用いてワクチンの安全性、許容度、免疫原性を調べる第I相臨床試験の準備を進める。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

リーシュマニア症は、熱帯・亜熱帯地域や隣接地域の多くの人々にリスクのある昆虫媒介性の見捨てられた病気である。ワクチン開発は、WHOの目標「見捨てられた病気の地球規模問題解決に向けた継続的努力」に貢献し、これら感染症の予防、診断、治療薬等確保を目指すロンドン宣言とも合致する。治療的・予防的ワクチンの貢献は以下の通りである。

a)公衆衛生が崩壊し集団感染があるシリア、アフガニスタン、イラク等の国々、人畜共通感染症で感染リスクの高い中央・南アジア地域等の皮膚リーシュマニア症(CL)コントロール。

b)薬剤とワクチン併用療法による治療期間短縮、副作用軽減、再発防止等の可能性。特に薬物療法に十分反応しないCLの場合。

c)インド、ネパール、バングラディシュ、ブータンなど内臓リーシュマニア根絶プログラムの継続。長期広範囲の薬剤や殺虫剤の効果が疑問視されており、伝搬阻止に有効なワクチンは、理想的推進力。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

T細胞の免疫応答を誘導するワクチンは、従来のワクチンと異なるデザインが必要である。これまで、不活化或いは組換えウイルスや細菌、抗原をコードするDNAやRNA、タンパク、ペプチド等様々試みられたが、それぞれ利点と欠点がある。DNAとRNA ワクチンは、CD8+ T細胞応答の誘導が証明されている。安全で長期プログラムに適合し、ベクターに免疫原性がなく繰り返し免疫に適している。変異病原体の新しい抗原に対しても迅速に対応でき、製造、輸送は容易である。近年DNAワクチンの進歩により免疫原性が増し、臨床試験の登録が増えていることは、このワクチンが受け入れられていることの証である。本プロジェクトのDNAワクチンは、最先端技術のMIDGEベクターを用いる。このワクチンは線状二本鎖DNAで、必要最小限の塩基配列のみを有する。本ベクターの体内分布や毒性試験の結果は最近発表されたが、安全性は極めて高い。

各パートナーの役割と責任

欧州ワクチンイニシアチブ(EVI)は、全体のコーディネーション及びプロジェクトのマネジメントを担当する。

長崎大学は、皮膚リーシュマニア症に対するワクチン候補の予防的及び治療的効果の前臨床評価を担当する。本研究は、臨床安全評価試験と共に、流行国での第II相臨床試験に進む必須項目である。

モロガン社(Mologen)は、治験用ワクチンの委託製造を担当し、ワクチンの安全性試験の準備、またChariteと密に連携して免疫原性評価試験の準備を行う。

ベルリン医科大学(Charite)は、第I 相臨床試験に関するヒト免疫学を担当する。免疫モニター法の標準化及びその指導、また免疫応答を調べる合成ペプチドの作成及び管理などを行う。

ロンドン大学熱帯医学校(LSHTM)は、皮膚リーシュマニア症のマウスモデルに用いる原虫分離株を提供する。皮膚リーシュマニアモデルと皮膚病変及び原虫量の測定方法を長崎大学に技術提供する。

最終報告書

1. プロジェクトの目的

LEISHDNAVAXは、ヒトでの抗原性と、内臓リーシュマニア症マウスモデルで有効性が確認されたDNAワクチン候補です。本研究の目的は、LEISHDNAVAXの皮膚リーシュマニア症に対する予防効果と治療効果を評価して前臨床試験を完成させること、さらに第一相臨床試験に向けて準備することです。

 

2. プロジェクト・デザイン

LEISHDNAVAXは、5種類のリーシュマニア原虫抗原を用い、T細胞を標的としたDNAワクチンです。ワクチン評価系を最適化後、2系統のマウスを用い、免疫学的指標、病変部位の大きさ、感染原虫量を測定し、皮膚リーシュマニア症に対する効果を評価しました。また、第一相臨床試験用試薬類の準備を開始しました。

 

3. プロジェクトの結果及び考察

LEISHDNAVAX に対する抗原特異的T細胞応答を調べるため、5種類のリーシュマニア原虫抗原の合成ペプチドプールを作成しました。また、抗原の組換えタンパク質作成のため3種類の発現系を試みました。

マウスを用いた前臨床試験では、様々な条件を検討した結果、至適条件としてDNAワクチン100 μg2週間間隔3回投与に決定しました。ワクチンのベクターは、L-MIDGE と MIDGE-Th1の2種類を試し、インターフェロンγ産生が高いこと、内臓リーシュマニア症モデルで既に有効性が確認されていることから、MIDGE-Th1を用いました。LEISHDNAVAXは、リーシュマニア原虫感受性および抵抗性の2系統のマウスに対し、抗原特異的抗体産生およびT細胞の抗原ペプチド特異的インターフェロンγ産生を誘導しました。しかし、皮膚リーシュマニア症を惹起するメジャーリーシュマニア原虫とメキシコリーシュマニア原虫の感染に対する予防効果については、原虫量および病変の大きさに関して、どちらの原虫感染でも、免疫群と対照群との間に有意な差は認められませんでした。

治療効果については、ワクチン単独投与あるいは標準的治療薬パラモマイシンとの組み合わせ効果を調べました。パラモマイシン治療群では、薬剤量依存的に感染原虫量が低下しましたが、ワクチン投与の効果は観察されませんでした。本ワクチンのリーシュマニア原虫感染マウスに対する治療効果は、有意ではないとの結論に至りました。

なお、内蔵リーシュマニア原虫感染の論文と同様、皮膚リーシュマニアモデルにおいても、ワクチンの毒性や疾病増悪等の悪影響は観察されませんでした。

また第Ia相臨床試験に向けて、末梢血未分画単核球の特異的T細胞応答のマスフローサイトメトリー解析と、血中自然免疫細胞のフローサイトメトリー解析用マーカーパネルをデザインしました。