Investment

プロジェクト

三日熱マラリア原虫肝内休眠体の迅速診断に向けた研究
Project Completed
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  • 受領年
    2017
  • 投資金額
    ¥72,883,080
  • 病気
    Malaria
  • 対象
    Diagnostic
  • 開発段階
    Concept Development
  • パートナー
    熊本高等専門学校, 生物医学霊長類研究センター, 長崎大学熱帯医学研究所(熱研)

イントロダクション/背景

イントロダクション

アジア太平洋地区とアメリカ地区では、ここ十年間にマラリアの臨床症例は90%以上減少し、三日熱マラリアはアフリカを除いた地区では最も多いマラリアとなった。この変化は、三日熱マラリア原虫が肝内休眠体を持ち再発するという生物学的特性と関係している様である。2030年までにAIDS、結核およびマラリアの流行をなくすという国連の持続可能な開発目標の観点、および、マラリア根絶が進められている時代背景の下、三日熱マラリアに対する効果的戦略は不可欠である。肝内休眠体の感染は無症状のため、人集団中に隠れた原虫保有者を作り出すこととなり、蚊から新たに感染せずとも、数週間~数年間にわたり患者におけるマラリア再発や、新たな流行の原因となる。現在、肝内休眠体の保有者を診断する適切な診断ツールは存在せず、この問題はWHOの「マラリアに対するグローバル技術戦略2016–2030」でも取り上げられている。

 

プロジェクトの目的

マラリア原虫肝内休眠体を診断するためのメタボライト・マーカー候補分子の同定

 

プロジェクト・デザイン

我々の研究チームで確立しているマラリア原虫休眠体培養系と感度と定量性の良いメタボローム解析帆を組み合わせて研究を行う。我々が確立したサルマラリア原虫Plasmodium cynomolgi休眠体培養技術で培養したP. cynomolgi休眠体培養および適切なコントロールからメタボライトを検出する。休眠体特異的なメタボライト候補のリストを作成し、培養条件下での概念証明を行う。この研究成果は、マラリア原虫肝内休眠体を同定するためのメタボライト・マーカー候補分子の同定に向けて、生体を使用する概念証明を行うための詳細な実験計画策定(P. cynomolgiとアカゲザルのモデル系)のための基盤となる。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

肝内休眠体の保有者を見つけることができる診断ツールがあれば、短期的にはマラリア患者がいる場所やその程度を正確に把握することができるようになるとともに、長期的には、肝内休眠体の保有者にのみ薬剤投与をすることができるようになる。この、休眠体ステージのマラリア原虫保有者を同定・治療するというアプローチにより、患者本人の発症予防ができるとともに、三日熱マラリアのさらなる伝播を阻止し、投薬の必要がない患者への不要な投薬が抑制される。我々の特徴的なアプローチにより、このような診断ツールを開発することが可能であるとの概念が培養条件下で証明されると考える。もし成功すれば、生体での概念証明実験を行う詳細な準備を進める。このような診断ツールは、三日熱マラリアの制御と絶滅に大きな貢献をすることになると考える。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

休眠体マラリア原虫のメタボライトを解析するために、我々が確立した革新的な休眠体マラリア原虫培養法を用いる点と、大量のメタボライトを定量的に検出することができる革新的技術の「キャピラリー電気泳動-質量分析法」を用いる点

各パートナーの役割と責任

長崎大学は実験デザインとメタボローム解析を行う。オランダの生物医学霊長類研究センターはサルを用いた実験および休眠体培養実験を分担する。熊本高等専門学校はメタボローム解析の支援を行う。全てのパートナーがデータ解釈を責任を持って行う。

最終報告書

1. プロジェクトの目的

三日熱マラリアの再発はマラリア撲滅の大きな壁となっている。再発の原因となる休眠体型原虫を検出する手段がなく、原虫保有者を特定することができないためである。本プロジェクトは、三日熱マラリア原虫の休眠体を検出できる信頼性の高い診断法を開発するために必要な、診断標的分子を見出すことを目的として行った。

 

2. プロジェクト・デザイン 

三日熱マラリア原虫と近縁でサル感染性の、休眠体があるサイノモルギ・マラリア原虫と休眠体がないノールズ・マラリア原虫を用いる。原虫を感染・非感染させたサル初代培養肝細胞の培養上澄の経時的な代謝産物解析から、原虫が休眠体として感染している肝細胞培養上澄に特徴的な代謝産物を標的分子候補として選定する。

 

3. プロジェクトの結果及び考察

休眠体がないノールズ・マラリア原虫は、サル初代培養肝細胞1株に感染・非感染させた(対照群)。対照群では、原虫感染後9日目に発育型原虫のみが存在し、11日目には肝細胞期原虫は全て赤血球期に変化していなくなる。

休眠体があるサイノモルギ・マラリア原虫は、サル初代培養肝細胞3株に感染・非感染させた。ただし、発育型原虫を殺滅する薬剤を投与した群(薬剤投与群)と投与しない群(標準群)を用意した。薬剤投与群では原虫感染後9日目も11日目も休眠体原虫のみが存在している。標準群では原虫感染後9日目では発育型原虫が存在し、11日目では休眠型原虫のみと考えられる。

細胞培養上澄の代謝産物解析から、ノールズ・マラリア原虫を感染させた場合には約500種、サイノモルギ・マラリア原虫を感染させた場合には約600種の代謝産物が検出された。ここから、原虫が休眠体として感染している肝細胞で特徴的に検出される代謝産物を、診断標的分子候補として抽出し優先順位付けを行った。第1候補;9日目または11日目に薬剤投与群に検出されたが対照群には検出されなかった8ピークが得られ、うち4ピークは分子が同定された。第2候補;11日目に薬剤投与群と標準群に検出されたが対照群には検出されなかった5ピークが得られ、うち3ピークは分子が同定された。第3候補;9日目に薬剤投与群と標準群に検出されたが対照群に検出されなかった6ピークが得られ、うち1ピークは分子が同定された。さらに、分子が不明な計11ピークのうち7ピークは、追加解析により分子の推定ができた。

今後、培養細胞への原虫感染下で得られた候補代謝産物が、生体への原虫感染下からでも検出できるか、休眠体の有無を評価する診断マーカーとして利用できるか、についての検証が待たれる。また、生体への原虫感染下でも分子が不明なピークが検出される場合には、分子候補として診断マーカーへの有用性を検討する。