Investment

プロジェクト

マラリア伝搬阻止ワクチン開発:Pfs230抗原デザインと提示
  • 受領年
    2016
  • 投資金額
    ¥59,565,000
  • 病気
    Malaria
  • 対象
    Vaccine
  • 開発段階
    Antigen Identification
  • パートナー
    愛媛大学, PATHマラリアワクチンイニシアティブ

イントロダクション/背景

イントロダクション

マラリアは人類に深刻な影響を及ぼすグローバルな保健課題です。蚊で媒介されるこの寄生虫病には、毎年世界で数億人が罹り死者も40万人におよんでいます(1)。現在流行地でのマラリア対策としては、治療薬に加えて、蚊帳や殺虫剤による媒介蚊対策が行われていますが、治療薬耐性マラリアや殺虫剤耐性蚊が広がりその対策に難渋しています。そこで、マラリア対策の切り札としてワクチンが開発されていますが未だ実用化されていません。中でも、患者から蚊への原虫感染サイクルを断つことが出来るマラリア伝搬阻止ワクチン(TBV)は、マラリア撲滅の切り札と考えられています。しかし、これまで抗原タンパク質合成の困難さ、ヒトでの免疫原性の低さ、等の理由でTBVの開発は進んでいませんでした。そこで、新規TBV抗原の探索や、TBV効果を高める新規の投与方法の開発が急務となっています。

 

プロジェクトの目的

Pfs230は以前よりTBV候補となっていましたが、その大きなサイズと構造の複雑さからワクチン抗原タンパク質の合成が困難でした。そこで、マラリアタンパク質合成に長けている愛媛大学発の新技術、コムギ胚芽無細胞タンパク質合成法(WGCFS)を用いて高いTBV活性が誘導出来るPfs230の部位を探索します。次に、MVIが保有するワクチン製造用のタンパク質合成システムを用いてそのPfs230の部位を大量合成します。そして、ナノ粒子を用いたMVIの新技術を組み合わせてTBV効果の高い新規Pfs230ワクチンを作製することを目的に本プロジェクトを実施します。

 

プロジェクト・デザイン

1)Pfs230は複雑な立体構造が予想されているため、その予想立体構造を元に27種類の部分タンパク質をWGCFSを用いて合成します。合成したすべてのPfs230に対して抗体を作製し、TBV活性を測定し、効果の高い部分を探索します。

2)WGCFSは、高品質なマラリアタンパク質を迅速に作製するのに優れた技術ですが、ヒトへの臨床試験用タンパク合成には用いることが出来ません。そこで、上記で見出したTBV効果の高いPfs230の部分を、MVIは臨床試験用のタンパク質が合成出来る昆虫細胞発現系を用いて大量合成します。

3)MVIが保有するウイルス様ナノ粒子と組み合わせて、Pfs230ワクチン効果を高めるための新技術開発を行います。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

マラリアエリミネーションが目標となった現在、TBV開発は喫緊の課題です。本プロジェクトによって、Pfs230を抗原とする新規TBVが開発されれば、これまでワクチン候補がわずかしか無く難渋していたTBVの実用化を加速し、また、既存のマラリア対策ツールと組み合わせることにより、流行地におけるマラリアエリミネーションの推進に貢献できます。さらに、TBVをマラリア治療薬と組み合わせることにより、薬剤耐性マラリア原虫の拡散を防ぐことが出来るのみならず、現在開発中の他のワクチンと併用することにより、ワクチン耐性原虫の拡散も防ぐことが出来ます。つまり、現在有効な対策の有効期間を延ばすことが出来ます。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

愛媛大学では、WGCFSを用いることにより合成が難しいマラリアタンパク質を容易に高品質で合成できます。したがって、分子量の大きく、複雑な構造をしているTBV候補抗原であるPfs230タンパク質の作製にWGCFSを用いることで、成功の可能性は高いと考えられます。また、MVIではヒトでのワクチン効果を高めるために、新しいナノ粒子技術を開発しています。本プロジェクトでは、それをPfs230タンパク質と組み合わせることにより、高い効果のある新規TBVの開発が期待できる点が革新的です。さらにMVIはマラリアワクチン臨床試験の実績も豊富で、臨床試験に向けた開発パイプラインも整っています。したがって、本プロジェクトのパートナーは、Pfs230新規マラリア伝搬阻止ワクチン開発を迅速に実施する上で最適なものです。

各パートナーの役割と責任

MVIは本研究プロジェクトの代表者であり、マラリアワクチン研究開発の永い実績があります。したがって、TBV効果の高いPfs230の部分が見つかり次第、ワクチン抗原の大量合成、ワクチン効果を高めるためのナノ粒子技術基盤を駆使して、臨床試験に向けたワクチンを迅速に作製します。愛媛大学は、WGCFSを用いてPfs230の部分を高品質に合成し、抗体を作製します。さらに、MVIの共同研究者である米国NIHにおいてSMFAと呼ばれるハマダラカを用いた方法で抗体のTBV効果を測定します。

他(参考文献、引用文献など)

1. World Health Organization (WHO). World Malaria Report 2016. Geneva: WHO; 2016.