Our Motivation


これまでに見てきたように、開発途上国の感染症の新薬開発には市場原理が働きません。そこで、こうした状況を打破しようと、欧米を中心に、従来にはなかった新しい組織が次々と立ち上がりました。それは、開発途上国のための新薬開発、臨床研究、製品化に特化した、Product Development Partnership(s)(PDP:医薬品開発パートナーシップ)と呼ばれる、国際的な非営利組織です。現在、欧米を中心に約20ほどのPDPが存在しており、HIV、マラリア、結核、顧みられない熱帯病に特化した医薬品、ワクチン、診断薬などの研究開発、臨床試験などを世界中で行っています。

PDPは、製薬企業と同様に製品ポートフォリオ(*)を戦略的に維持管理をしています。製薬企業と大きく異なる点は利益創出を目的とはせず、非営利であることが最も大きな違いです。PDPはプロジェクトマネジメントのスキルやノウハウを持ち、世界中の企業、大学、研究機関とも積極的に連携して研究開発を推進する、従来にはなかった新しいタイプの組織で、グローバルヘルスR&Dを担う新しい存在です。

* 製品ポートフォリオ:研究開発段階の製品群
PDPは、一つあるいは、複数の疾患に特化した製品開発を行っています。PDPは非営利であることから、お互いに研究開発の競合や重複を避けながら、時に共同研究を進めるという、従来になかったビジネスモデルです。

PDPは相互に積極的に連携することで、新薬開発に関する科学的、経済的、法的、政治的な課題を解決するための共同研究、アドボカシー活動などを行っています。

【参考】
The Global Health Technologies Coalition
25を超えるPDPからなる連合。

The PDP Funders Group
PDPに助成する公的・民間機関によるグループ

*GHIT Fundはこれらのグループとも連携しています。

PDPは単独で活動するだけでなく、様々な組織と連携することでさらにその存在感を高めています。また、製薬企業、バイオベンチャー、大学、研究機関にとっても、PDPと連携することによるメリットが生まれています。

PDPと連携しながらグローバルヘルスR&Dに取り組むことで、製薬企業はグローバルヘルスの課題解決に貢献できるのは言うまでもなく、市場拡大が進む開発途上国における製品ポートフォリオの拡充、中長期的なグローバルブランディングにつながります。バイオベンチャーは、研究開発に成功すれば大きなビジネスチャンスとなります。公的機関による買い上げ制度も、研究投資へのリスク軽減にもつながります。大学は、新たな研究機会の拡大や製品化に関与する機会となり、研究機関にとっては、公衆衛生のリスクを削減するというミッションに貢献することができます。

このように、PDPとの連携を行うことによって、開発途上国の感染症のための研究開発・供給を促進するという目標を達成できるだけでなく、ステークホルダー両者にとってWin-Winの関係を構築することができるのです。
PDPはまだ比較的歴史の浅い組織ですが、すでに39もの製品を世の中に送り出しています。その中には、ブレークスルーがいくつも含まれています。

例えば、薬剤耐性結核の診断に用いられるXpert MTB/RIFは3ヶ月必要だった診断期間をたった2時間に短縮することに成功しています。小児用のマラリア薬Coartem Dispersibleはすでに36の国々に届けられ、マラリア治療薬ASAQは新しいタイプの合剤で、アフリカの30の国々で承認申請が行われ、すでに1億剤以上が配布されました。

PDPの参入によってグローバルヘルス分野における医薬品研究開発(グローバルヘルスR&D)の景観は大きく変化しています。PDPと連携することで研究開発のスピードは加速させると同時に、コスト削減を図り、グローバルヘルスR&Dに大きなインパクトをもたらすことができるのです。

GHIT Fundはこうしたグローバルな連携を戦略的に支援することで、新薬開発を目指して行きます。
日本は、今まで政府開発援助(ODA)や無償技術供与などで開発途上国の発展に大きな貢献を果たして来ました。また、国連機関や世界基金などへの拠出金に関しても世界の中でもトップレベルのコミットメントを果たしています。

その一方で、保健医療分野に関する支援額はODA全体の2%だけに留まり、また、グローバルヘルスR&Dの分野における拠出金額に関しても日本の存在感は決して大きなものとは言えません。対GDP比(グローバルヘルスR&Dへの拠出金)で見ると、日本はその国力と比較して十分な貢献ができていないという現状にありました。
日本の研究開発能力は、世界でもトップレベルであることは疑う余地がありません。国際特許出願件数、新薬開発数のいずれにおいても、日本は世界の科学技術をリードしている国の一つです。

その研究開発能力、すなわち日本が保有する技術力とイノベーション創出能力を開発途上国の感染症制圧のために活かすことは、今後の日本にとって大きな意味を持っています。また、こうしたグローバルヘルスの領域において積極的に貢献し、開発途上国の課題解決に貢献してくことは日本の役割であり国際社会のリーダー国としての責任です。

今まさに日本がグローバルヘルスの分野でも積極的にイニシアティブを取り、リーダーシップを発揮する重要な時に来ています。