マラリアワクチン候補BK-SE36の臨床開発
  • 受領年
    2014
  • 投資金額
    ¥99,999,999
  • 病気
    Malaria
  • 対象
    Vaccine
  • 開発段階
    Phase1 Clinical Development
  • パートナー
    大阪大学微生物病研究所、ブルキナファソ国立マラリア研究センター、欧州ワクチン・イニシアティブ

イントロダクション/背景

本プロジェクトの目的は、マラリアに対する効果的で長期的な防御対策のためワクチン候補BK-SE36の臨床開発を行うことです。悪性マラリアは、最も致死的な種である熱帯熱マラリア原虫によって引き起こされます。マラリアの全死亡率はここ10年ほどの間に減少していますが、地球規模では未だ甚だしい罹患率と死亡率により最も重要な寄生虫病であります。

 

マラリア原虫は、異なる宿主(蚊及びヒト)を持ち、また、ヒト体内の異なる器官に感染するなど複雑な生活環を持ちます。BK-SE36は、マラリアの罹患率とそれによる死亡率を減少させるため体内における原虫増殖を抑制するものです。主として流行地域で最も死亡率の高い乳幼児を対象としたマラリア原虫感染赤血球期マラリアワクチン候補です。本プロジェクトでは、以下の項目を目指し、ブルキナファソにおいてBK-SE36マラリアワクチンの第Ib臨床試験を実施します。

 

(i)これまでに行ったウガンダでの臨床試験結果と、マラリアの疾患流行特性について異なるブルキナファソでの臨床試験結果を比較します。

(ii)本臨床試験は、これまで実施したことのない低年齢層(0−5歳児)を対象に行います。

(iii)安全性、免疫原性および有効性に関する追加情報を可能なかぎり収集します。

 

さらに、このプロジェクトでは、ワクチン反応を増強するため自然免疫アジュバント(免疫賦活化剤)を加えたBK-SE36 (BK-SE36/CpG)を投与した日本人ボランティアについて、フォローアップ研究を行います。このフォローアップ研究では、BK-SE36/CpGの安全性および免疫原性の長期評価が可能になります。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

本パートナーシップは、マラリアワクチン開発において長年の経験を持つ、ブルキナファソのCNRFP、ドイツのEVI及び日本の大阪大学微生物病研究所が一体となり、ワクチン開発を加速する目的で専門知識を相補的に融合させることにより先導します。本三機関(2研究機関および1PDP機関)は、地球規模での最重要且つ火急の課題であるマラリアの撲滅と制御のための技術開発に、共通の関心と強い責任意識を持つ非営利団体です。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

現在に至るまでマラリアに対するワクチンは、ライセンスされていません。将来的に、高い防御効果を持つマラリアワクチンは、マラリア原虫の生活環における異なるステージからの数種類の抗原を組み合わせる必要があると予想されています。マラリア症状の原因となるヒト赤血球にマラリア原虫が感染したステージで発現される赤血球期抗原は、このような複数の抗原を組み合わせたマラリアワクチンの成分の一つとなると考えられます。特に有望なマラリア赤血球期ワクチン候補であることが、大阪大学微生物病研究所が実施したこれまでの臨床試験によって実証されたBK-SE36は、本プロジェクトによってさらにワクチン候補としての特性評価を予定しており、複合マラリアワクチンとしての可能性を実証する次のステップに移ります。

また、新規のアジュバントK3 CpGを用いたBK-SE36/CpG マラリアワクチンは、免疫機能が低下している人(流行地域の成人や非流行地域からの旅行者)に対して効果的であることが予想されます。BK-SE36/CpGの臨床開発において、長期的な安全性および免疫原性の評価は今後において必須となります。

各パートナーの役割と責任

堀井俊宏教授はRIMD側の主任科学者/コラボレーターであり、BK-SE36マラリアワクチンの発明者です。彼は彼のチームとともにBK-SE36臨床試験のサポートやアドバイスをし、スポンサーの代表として働くとともに、BK-SE36のためのワクチンのGMP産生と新規アジュバントの前臨床試験を統括しています。さらに、RIMDチームはBK-SE36第Ib相の被験者サンプルについて液性免疫応答を測定するためELISAを行い、熱帯熱マラリア原虫に感染していない披験者における防御エピトープを決定します。また、感染した披験者からは感染した原虫のSERA5遺伝子の遺伝子多型解析を行います。RIMDチームはBK-SE36/CpG第I相臨床試験のフォローアップ調査を担当しています。

 

EVI理事長のオディール・ルロワ博士はGHIT2014—109プロジェクトのコーディネーターです。EVIは、プログラム全体の調整をし、ブルキナファソBK-SE36の第Ib相臨床試験、および、日本におけるBK-SE36/CpGの第Ia相臨床試験のフォローアップ試験の目的達成のための管理を担当します。EVI's重要な役割には、第Ib相臨床試験の監督とともにそのための技術サポートと、プロセス開発、アジュバントの選択およびテストの概括が含まれています。BK-SE36の第Ib相臨床試験のスポンサーはEVIに監視活動、治験サイト訪問や監査を委任しています。また、EVIは、スポンサーに対してBK-SE36臨床開発計画のすべての側面の開発と評価をサポートしています。

 

CNRFPはBK-SE36第Ib相臨床試験の直接の実施に主要な役割を果たしています。Sodiomon Sirima博士は、BK-SE36第Ib相臨床試験実施の調整と全体の責任を負う主任研究者です。 CNRFPは、第Ib相臨床試験の披験者のT細胞のサイトカインの測定、マラリアの診断と生殖母細胞の検出を担当しています。スポンサーは、ブルキナファソ規制当局への対応、臨床試験実施、およびデータ管理だけでなく、統計解析についてもCNRFPに委任しています。

 

 

他(参考文献、引用文献など)

大阪大学微生物病研究所(RIMD)

大阪大学微生物病研究所は、1934年に設立され、微生物病に関する包括的研究のための3つの研究部門と、感染症及び遺伝情報の専門研究において3つの附置センターで構成されています。病原体の同定と病原性メカニズムの解析に関する基礎研究のほか、ワクチンおよび診断法を開発してきました。微生物病研究所が開発したワクチン製造などの研究成果を実用化するために、一般財団法人阪大微生物病研究会(BIKEN,1934年設立)と長年に亘って共同で取り組んできました。両機関は共に、公共の利益に奉仕し続け、世界的な健康増進に貢献しています。

 

欧州ワクチン・イニシアティブ(EVI)

当初、欧州マラリアワクチン・イニシアティブ(EMVI)として1998年に設立されたEVIは、効果的且つ実現可能で安価なマラリアワクチン及び低所得者の貧困によるその他の疾病に対するワクチンの開発を支援するヨーロッパのPDPを先導しています。これまでに、EVIは初期臨床試験(第I相)に進んだ16のマラリアワクチン候補から32種類の異なるワクチンの開発の支援を達成してきました。このうち、3つのマラリアワクチンは、サブサハラ・アフリカで設立された連携機関で第II相臨床試験に移行しました。

 

ブルキナファソ国立マラリア研究センター(CNRFP)

CNRFPはブルキナファソの政策のため、科学的根拠に基づいた意思決定に貢献する質の高い研究を促進する必要があるとして、1983年にブルキナファソ保健省によって設立された研究機関です。Ouagadougouに事務局を置き、全国にフィールド調査のための拠点ネットワークを整備しています。これらのネットワーク間では、臨床研究施設が整備され維持されています。CNRFPは、マラリア対策の主要な政策に関する極めて重要な研究の実施及び、多数のマラリアワクチン開発プロジェクトに寄与してきました。