プレスリリース

November 8, 2013

第一回助成案件発表 マラリア、結核、シャーガス病の治療薬・ワクチン開発 合計6件

東京/ニューヨーク(2013年11月8日

グローバルヘルス技術振興基金(Global Health Innovative Technology Fund、以下GHIT Fund)は本日、GHIT Fund初となる助成金案件「GHIT Fund RFP2013-001」に関して、マラリア、結核、シャーガス病の革新的な治療薬およびワクチンの国際共同研究開発に対して、合計6件、総額約5億6千万円の助成金を交付することを発表致します。

 

【マラリア】 合計4件(内訳:医薬品2件、ワクチン2件)

マラリアは、人類に重大な影響を及ぼす世界的な保健課題の一つで、毎年2億人以上が感染し、65万人以上が命を落としています。GHIT Fundはマラリアの制圧に向けた画期的な国際共同研究開発、合計4件に助成します。その1件目は、大阪大学微生物病研究所、大阪大学医学部附属病院未来医療センター、ウガンダのグル大学によるBK-SE36マラリアワクチンの新たな剤型の開発に対して7145万円を助成します。最近発表された研究報告によるとBK-SE36ワクチンは、重度のマラリア感染に対して有効性を示すことが示唆されており、現在開発中のマラリアワクチンの最も有力な候補の一つとなっています。しかし、ウガンダ国内のマラリアが蔓延する地域で行われた初期の治験においては、ワクチンを投与された大人の多くに強い免疫反応がみられませんでした。研究チームは今回の助成金を用いて、アジュバント(免疫腑活化剤)として知られるCpG を添加することで、被験者のワクチンに対する反応を高めることが可能かを試験していきます。開発途上国におけるマラリアの拡大を抑えるためには、蚊帳やスプレー、抗マラリア薬といったその他の方法も含めた多面的なアプローチとともにワクチンが最も必要とされています。

 

2件目は、愛媛大学、株式会社セルフリーサイエンス(愛媛県松山市)、 PATHマラリアワクチンイニシアティブ(米国ワシントン)の研究チームに対する約5914万円の助成です。蚊からヒトへの感染を予防することの出来る感染阻止ワクチン(マラリアワクチン)を開発する上で最も大きな課題の1つは新規ワクチン候補の迅速かつ安価な探索法の確立です。今回の共同研究開発では、愛媛大学が開発したタンパク質を大量に合成できる画期的な無細胞技術を用いて、マラリアワクチンの候補となる多数のタンパク質を大量に合成し、抗体を作り、ワクチン効果を試験していきます。従来のマラリアワクチン開発法に比べて迅速に新規マラリアワクチン候補を見つけることができるため、新規ワクチンの開発を加速することが期待されます。

 

今回の助成金額で最大となる3つ目の案件は、Medicines for Malaria Venture(MMV)と武田薬品工業株式会社(武田薬品)による、抗マラリア薬の少数の健常人を対象とした臨床試験(フェーズIb/フェーズIIa)に対する約2億5388万円の助成です。現行の抗マラリア薬への耐性が強まりつつある中、新たな抗マラリア薬の必要性が急速に高まっています。MMVと武田薬品が共同開発する抗マラリア薬(DSM265)は、長時間効果を持続する候補化合物で、マラリア原虫内の特定の酵素の働きを選択的に阻害することで効果を発揮します。現在、マラリアの治療にはアルテミシニン併用療法(即効性のあるアルテミシニン誘導体と、持続性のある別の抗マラリア薬を組み合わせて使用)がゴールドスタンダードとなっていますが、DSM265は持続性のある抗マラリア薬として新たな選択肢となり、また今後合剤としての使用も期待されます。この研究は、最近臨床試験フェーズIの段階に入り、候補化合物の安全性および有効性が示されれば、次の段階の臨床試験に進むことが期待されます。

 

MMVと武田薬品には、上記に加えて、現在前臨床試験段階にあるマラリア治療薬(ELQ300)の開発と製剤化に対して5600万円が助成されます。ELQ300もDSM265と同様に効果持続性を有しており、開発に成功すれば、月に一度の投与でマラリアの治療と予防を可能にする次世代の薬剤として期待されています。今後の安全性試験や臨床での使用に向けて、製剤化に向けた検討が実施される予定です。

 

【結核】 合計1件 (ワクチン1件)

5件目は、独立行政法人医薬基盤研究所と株式会社クリエイトワクチン(大阪市)、米国ワシントンD.C.に拠点を置く国際的な非営利組織Aerasが共同開発する新たな結核ワクチンの初期段階の研究に対して7000万円を助成します。毎年、新たに約860万人が結核を発病し、約130万人が結核で亡くなっています。現在使用されている結核ワクチンであるBCGは約90年前に開発されましたが、BCGは小児の重症な結核の予防には有効ですが、若者や成人の肺結核には効果が限られています。今回、当基金が支援する結核ワクチン開発は、若者や成人の肺結核の予防に有効であるワクチン候補となることが期待されるものです。患者の粘膜をターゲットとした初のワクチンで、結核菌が肺に侵入するのを防ぎます。このワクチンは、現行の結核ワクチンBCGよりも効果的であることがマウスによる実験で証明されています。

 

【顧みられない熱帯病:シャーガス病】 合計1件(医薬品1件)

6件目となる最後の案件は、主に中南米の貧困層の間で感染が広がっている、顧みられない熱帯病の一つであるシャーガス病の新薬開発への助成です。エーザイ株式会社と、マサチューセッツ工科大学およびハーバード大学の共同研究機関であるブロード研究所(米国マサチューセッツ州)の新薬共同研究開発に対して5000万円を助成します。現在世界中で約800万人が感染しているとされるシャーガス病において、急性期から慢性期に移行した症例では、劇的な効果を示す治療薬がありません。シャーガス病の慢性的な感染は心血管疾患を引き起こし、場合によっては死に至ることも少なくないため、一日も早い慢性期の症例にも有効な新薬の開発が必要とされています。

 

「マラリア、結核、シャーガス病には世界中でおよそ7人に1人が感染しており、こうした疾患に関する治療薬・ワクチンの候補に対して、当基金初となる合計6件の助成金を決定しました。これらの国際共同研究開発に対する助成は、日本のイノベーションをグローバルヘルスに応用することへの確かな一歩であり、またそれを実証するものです。」と、GHIT FundのCEO兼専務理事である、BT・スリングスビーは述べています。 また、GHIT Fundの代表理事を務める黒川清は、「世界の最貧困層を対象とした新薬やワクチンは、感染、貧困、そして不安定な社会という悪循環に終止符を打つことによって、世界中に安定をもたらし、新たな市場を構築することができます。」と述べています。

 

 

 

GHIT Fund RFP2013-001について

GHIT Fundでは、公募案件GHIT Fund RFP 2013-001に関して、提出期限となった2013年6月15日までに、28件のプロポーザル(申請書)を正式に受理し、その後GHIT Fundマネジメントチームが事前審査を行いました。その結果、25件が適格、3件が不適格と判断されました。助成金の審査・選定にあたっては、助成金選定・交付の透明性、公平性、信頼性を保証するために、プロポーザル1案につきグローバルヘルスR&Dに精通した外部審査員3名による査読、GHIT Fundとは独立したメンバーで構成される選考委員会によるプロポーザルの評価および選定、その後理事会によって選定案件の審議・承認を行いました。理事会は様々な要素や優先順位を考慮し、各助成金案件のプロジェクトスコープ(対象疾患、製品、研究段階)を決定します。

 

第2回スクリーニングプログラムについて

GHIT Fundはまた本日、第2回目となる化合物スクリーニング・プログラムの開始をお知らせ致します。このプログラムは、日本の民間企業、大学、研究機関等が保有する医薬品化合物ライブラリーの中から、途上国の感染症、特にマラリア、結核、そして顧みられない熱帯病に効果が期待される候補化合物の探索を目的としたものです。2013年4月に発表された第1ラウンドの申請においてGHIT Fundは、日本の機関と海外の機関との間に12のパートナーシップを構築し、すでに事業を開始しました。第2回目となる化合物スクリーニング・プログラムにご関心のある民間企業、大学、研究機関等のご担当者の方は、GHIT FundのウェブサイトからContact Formをダウンロードし、2014年1月31日(金)17:00までに、 件名:Potential Screening Platform 2013-002、RFPResponse@ghitfund.org までメールにてご連絡ください。 本案件に関しては、当基金ウェブサイトの「助成金の実施について」をご覧下さい。

 

 

GHIT Fundについて

一般社団法人グローバルヘルス技術振興基金(Global Health Innovative Technology Fund: GHIT Fund)は、日本の製薬会社5社(アステラス製薬株式会社、エーザイ株式会社、塩野義製薬株式会社、第一三共株式会社、武田薬品工業株式会社、(五十音順))、日本国政府、そしてビル&メリンダ・ゲイツ財団によって、2013年4月に共同設立された官民パートナーシップです。開発途上国に蔓延する感染症制圧に必要不可欠な医薬品、ワクチン、診断薬の研究開発および製品化の支援を目的とした国際的な非営利組織です。開発途上国の人々の健康や生命、社会経済活動に大きな影響を与え、国の健全な経済発展を妨げる様々な感染症の脅威に対して、日本が積極的にリーダーシップを発揮し、GHIT Fundを通じて新薬の研究開発および製品化を推進していきます。

 

<当件に関するお問い合わせ>

一般社団法人 グローバルヘルス技術振興基金

担当:鹿角、玉村