プレスリリース

May 22, 2015

GHIT Fund、初の診断薬開発、内臓リーシュマニア症向け新薬開発への投資、 および4つの新たなスクリーニングプログラム開始により累計投資額約43億円に

[東京 2015522] グローバルヘルス技術振興基金 (以下、GHIT Fund) は本日、約11億円の新たな投資を決定したことを発表いたします。GHIT Fund は世界に蔓延する感染症に向けた革新的な創薬開発に取り組み、設立以来2年間で約32億円の投資を行ってきました。この度の新規投資により、GHIT Fundの累計投資額は約43億円となり、そのポートフォリオに住血吸虫症を検出するための診断薬開発と内臓リーシュマニア症に対する治療薬の開発が加わることとなりました。また、スクリーニングプログラムには新たに4社の参画が決定し、各社が保有する化合物ライブラリーのスクリーニング事業が開始します。

 

GHIT Fundではこの度、世界で最も顧みられない感染症である住血吸虫症、そして内臓リーシュマニア症に向けた製品開発に対して新たな投資を行います。住血吸虫症には、寄生虫が潜む汚染水を介して経皮的に感染し、リーシュマニア症は、サシチョウバエが媒介する寄生虫により伝染する感染症です。世界人口の半数に近い約30億人もの人々がこれらの疾患への感染の脅威にさらされています。

 

GHIT Fundでは、住血吸虫症の診断薬開発への投資を開始するとともに、標準治療薬であるプラジカンテルの小児用製剤開発への投資を継続して行っていきます。これら2つの投資により、GHIT Fundの住血吸虫症対策のパイプラインは世界的に見ても充実したものとなります。また、内臓リーシュマニア症向け治療薬開発への新規投資も決定いたしました。加えて、マラリア、結核向けの新薬開発を目指すスクリーニングプログラムには、新たに、第一三共RDノバーレ株式会社、大日本住友製薬株式会社、田辺三菱製薬株式会社、そして沖縄のオーピーバイオファクトリー株式会社の参画が決定しました。

 

GHIT Fund は、日本の技術と資金を、感染症制圧に向けた世界的な取り組みに活かすための、他に類をみない官民パートナーシップです。CEOであるBTスリングスビーは以下のように述べています。「GHIT Fundが有望な研究開発へ向けて投資を継続するとともに、内臓リーシュマニア症向けの治療薬、住血吸虫症診断薬開発という2つの新たな分野に投資を拡大したことを誇りに思います。これは、我々がわずか2年間で築き上げてきたGHIT Fundの成果を象徴しているだけでなく、長期に渡り世界の最も弱い人々を脅かしてきた感染症に対する、我々の重要な成果を示しています。」

 

■  住血吸虫症に向けたパイプラインの拡大

 

1件目の投資案件は、迅速かつ、効果的な住血吸虫症診断薬を開発するため、日本、フィリピン、米国を拠点とする4つの機関による共同研究開発に対して行われます。この新しいポイント・オブ・ケア検査は、住血吸虫症の診断に組換えタンパクを用いた血清検査(寄生虫抗体検査)です。現在の住血吸虫症の診断法では、感度の低い糞便検査(寄生虫卵検査)が用いられますが、今回の診断薬開発により、従来の顕微鏡検査による診断に代わり、遠隔地での利用と早期治療が可能になると考えられます。

 

住血吸虫症は、ある種の淡水産巻貝を宿主とする寄生虫が発症源となる感染症で、汚染した淡水を介して感染し、適切な治療を受けない場合、慢性感染による肝肥大、血便および血尿が起こることがあり、膀胱がんのリスクが上昇する可能性があると示唆されています。世界的に78ヶ国で発生例が報告されており、1億人の児童を含む2億3千万人以上の人々が罹患していると推測され、これは寄生虫疾患の影響としてはマラリアにつぐものです。

 

住血吸虫症検出コンソーシアムには、日本からは帯広畜産大学・原虫病研究センターおよび東京大学大学院・農学生命科学研究科、フィリピンからはフィリピン大学マニラ校・公衆衛生学部、米国からはシアトルを拠点とするInBiosインターナショナルが参画しています。帯広畜産大学・原虫病研究センターは、診断に高感度・高特異性を示す寄生虫抗原を既に同定しており、本プロジェクトではさらなる向上を目指して候補分子の探索を進めていきます。

 

帯広大学の河津信一郎教授は、「住血吸虫症患者がいち早く最良の治療を受けるために、より高感度の優れた住血吸虫症診断薬の開発が急務となっています。私たちはGHIT Fundからの投資により、郊外の農村に暮らす患者であっても、より迅速に診断を可能とする高感度の診断薬を開発することができます。顧みられない病気の治療において診断までの時間は重要であり、今回の投資により大きな効果を生み出せると考えています。」と述べています。

 

住血吸虫症治療薬に関するもう一つの案件として、GHIT Fundは、住血吸虫症の標準治療薬であるプラジカンテルの小児用製剤開発の継続にあたり、4億9千万円の追加投資を決定しました。この増資により、本案件は第II相臨床試験に進むことが可能になります。この共同研究開発は、オランダを拠点とするTop Institute Pharma、ドイツの Merck KGaA、日本のアステラス製薬株式会社、スイスの Tropical and Public Health Institute、イギリスのSimcyp Limited、およびブラジルの Farmanguinhos が参画するプラジカンテル小児製剤コンソーシアムによって進められており、GHIT Fundは2014年3月に第1回目の投資を行っております。

 

内臓リーシュマニア症に対する画期的な新薬候補化合物

 

GHIT Fund は、ジュネーブを拠点とする Drugs for Neglected Diseases initiative (以下、DNDi) と大阪を拠点とする武田薬品工業株式会社 (以下、武田薬品工業)とのパートナーシップに対し、新たな内臓リーシュマニア症治療薬開発のために4億円の出資を決定しました。この治療薬はアミノピラゾール系化合物を基礎とし、動物モデルにて概念実証が示された新規化合物群の誘導体最適化を行っていきます。

 

リーシュマニア症は複雑な病気であり、疾患の原因となるリーシュマニア原虫は20種を超えます。その中でも特に重症の型である内臓リーシュマニア症は発熱、体重減少、脾臓の肥大および貧血の症状を引き起こし、毎年、新たに約30万件の発症例が報告されています。その発症例のうち90%以上が、南アジアとアフリカの6ヶ国 (バングラデシュ、ブラジル、エチオピア、インド、南スーダン、スーダン) にみられています。内臓リーシュマニア症を治療せずに放置した場合、ほぼ確実に死に至り、HIV/AIDSと重複感染した場合、HIV/AIDSの発症が早められ、さらに深刻になります。

 

内臓リーシュマニア症に対する既存の治療法にはその安全性、耐性、安定性、および費用の面で深刻な問題があります。最新の治療薬もまた、薬剤抵抗性寄生虫に対する効果が次第に薄れてきており、HIV/AIDS に重複感染した患者では治療が不可能となる危険性が高くなっています。実際に、重複感染患者は、抗レトロウイルス療法を受けない限り、いずれは内臓リーシュマニア症を再発し、死に至る可能性が高くなることが分かっています。

 

今回の研究開発の対象となる新薬候補化合物は、安全で高い効果が期待されるだけでなく、薬の投与期間が短く、経口投薬を可能にすることで、疾患が流行する地域に適した治療薬を提供することが期待されます。既存の単剤療法や併用療法から大きく前進するため、他の経口剤と併用して使用することが目的とされており、HIV/AIDSの重複感染患者に対してもニーズに適した治療法を提供することができます。また、薬剤耐性に対する効果も期待されており、十分な効果が得られた場合には、内臓リーシュマニア以外の治療薬候補となる可能性も高く、疾患の感染拡大を抑制することができると考えられています。

 

DNDi と武田薬品工業によるアミノピラゾール化合物群「誘導体最適化プログラム」の共同研究開発は、内臓リーシュマニア症治療薬開発に向け、最適な化合物を特定することを最終目的としており、GHIT Fundの投資はそのプログラムの実施とその後の前臨床開発に対して適用されます。この誘導体最適化プログラムは、初期アミノピラゾールの誘導体化合物のプロファイリングから始まり、その後、リード化合物を4~6種類へと特定し、さらなるプロファイリングのために2~3種類の上質なリード化合物を選択、そして目標とする候補化合物として最も優れた化合物を、その後の前臨床開発に進む「最適化された誘導体化合物」として選択します。

 

DNDiのHead of Drug Discoveryであるチャールズ・モウブレイ氏は「私たちは内臓リーシュマニア症の治療薬として、この新薬の可能性にとても期待しています。GHIT Fundからの投資により、私たちのパートナーシップは、安全性が高く、短期間で効果を見出せる最良な新薬開発に向けて、最適な化合物をこの誘導体最適化プログラムを通して選定できると信じています。」と述べています

 

■  日本の4団体が新たにスクリーニングプログラムへの参画決定

オーピーバイオファクトリー株式会社、第一三共RDノバーレ株式会社、大日本住友製薬株式会社、田辺三菱製薬株式会社の4団体が新たにスクリーニングプログラムに参画することを発表いたします。

 

オーピーバイオファクトリー株式会社と第一三共RDノバーレ株式会社はそれぞれ、ニューヨークを拠点とするGlobal Alliance for TB Drug Development (TB Alliance)と連携し、結核向けの化合物スクリーニングを行います。GHIT Fundは各案件につき1500万円を投資します。

 

田辺三菱製薬株式会社と大日本住友製薬株式会社はそれぞれ、ジュネーブを拠点とするMedicines for Malaria Venture (MMV)と連携し、マラリアの化合物スクリーニングを行います。GHIT Fundは田辺三菱製薬株式会社とMMVの案件に1500万円、大日本住友製薬株式会社とMMVの案件に1100万円を投資します。

 

その他研究開発および発見に関するその他の出資と進展

GHIT Fundは本日、世界中の保健研究開発 (R&D) の継続的助成、ならびに現在の出資の進展について、この他にも多数の発表を行いました。

 

薬品およびワクチンの治験に対する助成の継続

  • 武田薬品工業および Medicines for Malaria Venture(MMV)が開発を行うマラリア治療薬候補であるDSM265は、第IIa相臨床試験への進行を決定するためのマイルストーンに到達しました。

 

  • BK-SE36と呼ばれるマラリアワクチン候補は、European Vaccine Initiative(ドイツ)、大阪大学微生物病研究所(日本)、Centre National de Recherche et de Formation sur le Paludisme(ブルキナファソ)によって開発が進められており、この夏に第I相臨床試験を開始する予定です。