About the GHIT Fund


イベント

【イベント報告】Unlocking the Secrets of Global Health Victories Can Save New Lives
2013.12.02

 

 

エジプトカイロの街で象足病を煩った男性に偶然出会った少年。その男性との出会いは、少年のその後の人生を大きく変えました。20年以上の時を経て、顧みられない熱帯病の制圧に向けての一歩が日本から始まりました。

 

11月12日Japan Society(NY)で開催されたパネルイベント「Unlocking the Secrets of Global Health Victories Can Save New Lives」。GHIT Fund CEOのスリングスビーBTは「過去10数年の間に開発された医薬品やワクチンなどの1500製品のうち、顧みられない熱帯病などの開発途上国のために開発された製品はわずか2%以下でした。しかし、GHIT Fundが誕生した今、開発途上国の感染症のための医薬品やワクチンの研究開発に必要な資金不足を補うことが可能になるのです。そして、日本には、抗コレステロール薬のスタチンや、糖尿病治療薬のチアゾリジンジオンなどのブロックバスターを作り出すことができるほどの世界トップクラスの研究開発能力があります。」と述べ、日本のグローバルヘルス分野における潜在性と実績を聴衆に語りかけました。

 

GHIT Fund代表理事・会長の黒川清は「今日、世界の国々は密接に繋がり、グローバルな課題に対して一国だけではなく様々な国が、そして国だけでなく、企業やNGOなどが共同して取り組まなければならない時代です。保健医療問題に関しても同様です。GHIT Fundは、日本の民間企業、政府、ビルゲイツ財団による極めてユニークで新しい官民連携の形です。この仕組みを利用して、日本の企業や研究機関に眠る様々な化合物が、グローバルヘルスの課題を解決するかもしれません。これは本当にエキサイティングなことです。日本の民間企業がグローバルヘルスに関与していることや、海外とのパートナーシップを構築することが重要なのです。ヨーロッパやアメリカとは違い、日本の製薬企業は海外への展開が遅れていた時期がありましたが、今は違います。新たな市場を求め活路を見いだそうとしている。そして、今グローバルヘルス分野での国際共同研究を通じて、世界とより結びつきを強めようとしているのです。」と述べ、日本のグローバルヘルスに対する積極的な姿勢を強調しました。

 

パネリストの一人、ピーター・ピオット氏(現ロンドン大学衛生熱帯医学大学院学長)は「日本は今まで援助という形でグローバルヘルス分野に大きな貢献をしてきました。こうした資金による支援に加えて、GHIT Fundを通じて、日本が有する研究開発の知見やイノベーションをグローバルヘルス分野に活用しようしています。今まで日本の技術やイノベーションはほとんど活用されてきていませんでしたが、世界はそれを必要としています。日本はグローバルヘルスの分野におけるゲーム・チェンジャーになるでしょう。」と述べ、日本発の新しいイニシアティブへの大きな期待を語りました。また、ピオット氏は自身の経験を振り返りながら「エイズによる死亡者数は近年大きく減少しましたが、それでもAIDSで年間160万人が死亡し、毎年230万人が感染している状況にあります。私たちは大きな進歩を遂げることができましたが、HIV/AIDSとの戦いはまだ終わっていないのです」と現状を訴えました。そして「このHIV/AIDSとの戦いから学ぶことのできる教訓は、科学とイノベーション、イノベーションの価格低下、様々なプログラムの提供が、AIDSによる死亡者数の減少に大きく貢献したということです。例えば、かつて一人当たり年間10,000ドル(100万円)かかっていたHIVの治療薬は、今では年間100ドル程度まで価格が下落しています。」と述べ、ツールを低価格で提供することがいかに大きな結果をもたらすかということを指摘しました。

 

結核の治療薬やワクチンの研究開発を行う非営利組織Global Alliance for TB Drug Development(TBアライアンス:ニューヨーク)のプレジデント兼CEOのメルビン・スピゲルマン氏は、「顧みられない熱帯病などの感染症によって開発途上国の貧困層が苦しめられており、そうした人々はイノベーションに対する高い対価を支払うことができません。結核は子どもの主要な死亡原因の一つであり、20〜30代の働き盛りの人々の健康に大きな影響を及ぼします。結核のワクチンは100年も前のものしかなく、診断薬に至っては80年前のものしかないのが現状なのです。」と述べ、結核の研究開発の課題に言及しました。「私たちのようなProduct Development Partnership(PDP)は、顧みられない疾患等の医薬品研究開発における参入障壁を下げ、通常の研究開発コストよりも圧倒的に低く押さえることができます。これは世界中の民間企業、研究機関、政府機関と連携することによって成し遂げられた成果です。今GHIT Fundは、全く新しい資金メカニズムによる研究開発支援を行っています。企業、政府、財団が研究開発のために協同拠出するという資金メカニズムの形態は一つのパラダイムシフトであり、今後新興国や途上国なども手本とすべきモデルだと言えるでしょう」と述べました。

 

国連児童基金(ユニセフ)事務局長、そして米国農務省長官を歴任したアン・ベネマン氏は、近年の世界の子どもの死亡率の大幅な低下に関して言及しました。「グローバルヘルス分野において持続的に結果を出し続けて行くために必要なことは、命を救うための治療、医薬品・ワクチン・診断薬などを配布するための効果的な医療システムです。医療システムの機能と結果を強化するためには、政府、市民団体、コミュニティなどセクター間の協同が必要不可欠なのです。」と述べ、医薬品やワクチンなどのツールの開発に加えて、ツールを提供するための流通の基盤や医療インフラを今後も強化する必要があることを指摘しました。これに呼応する形で、ピーター・ピオット氏は「配布(Distribution)は大きな課題です。しかし、コカ・コーラやタバコを世界中のどこでも売ることができるのであれば、医療に関しても同様に、どこであっても提供できるはずです。」と述べました。

 

スリングスビーBTは「私たちは、緊急性(Urgency)を重視しつつ、イノベーションを創出し、それらを必要とする人々の手に届ける方法を開発しなければなりません。私がエジプトカイロで出会ったあの男性のように、手遅れになる前にです。彼は適切なタイミングで必要な医療にアクセスすることができず、その結果、社会的にも経済的にも大きな負担を強いられることになりました。私たちはこうした問題を解決するために、今まで以上により良い方法で解決策を見つけ、取り組みを続けていかなくてはなりません。」と述べ、GHIT Fundの決意を示しました。